日本泌尿器科学会雑誌
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88 巻, 7 号
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  • 井口 靖浩, 合谷 信行, 東間 紘, 石島 正之
    1997 年88 巻7 号 p. 641-648
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 経尿道的前立腺電気蒸散術 (TVP) を臨床応用する前に, 新しい電極 VaporTrode® を用いて, 蒸散凝固による組織変化を豚肉で検討し, その安全性と有効性を評価した.
    (方法) まず最初に, 通常の切除鏡に電極 VaporTrode® と cutting loop electrode を接続し, それぞれ電気出力220Wと130Wで手動でワンストローク動かして組織変化を顕微鏡学的に検討した. 次に, 電極にかかる圧力を一定にできる実験系を作製し, ストローク速度を2.5cm/s, 3.0cm/s, 4.0cm/sに固定して, 電気出力160W, 200W, 275W, 300Wのそれぞれで VaporTrode® と cutting loop electrode による電気蒸散の組織への影響を比較検討した.
    (結果) 手動で行った実験では, VaporTrode® で平均1.24mmの深さの蒸散層と0.49mmの乾燥凝固層が生じ, cutting loop electrode では僅か0.25mmの深さの乾燥凝固層しか生じなかった. 次に実験モデルを用いて行った実験の結果より, 安全かつ有効な深さの蒸散層と乾燥凝固層を得るには275W前後の電大出力で3.0cm/s以下のゆっくりとしたストローク速度で操作を行うのが適当であることがわかった.
    (結論) Vapor Trode® で十分かつ安全な蒸散凝固を行うには, 通常の cutting loop electrode の時より, ストローク速度を遅くし, 電気出力を大きくして用いることが必要であろう.
  • ラット精巣内高E2モデルにおける造精機能障害について
    秋山 博伸
    1997 年88 巻7 号 p. 649-657
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 精巣内 estradiol (E2) 濃度と造精機能障害との関連性を検討する目的で, 基礎的実験を行った.
    (対象と方法) 8週齢 Sprague-Dawley 系雄性ラットを, 生食投与群, E2投与群, hCG投与群, aromatase inhibitor (A. I.) 投与群, hCG+A. I. 投与群, 生食精巣内投与群, E2精巣内投与群の7群に分類し, 12週齢時に屠殺の上, それぞれ血中 testosterone (T), E2, 精巣内T, E2, 精巣内 aromatase 活性, 精細管直径を測定した.
    (結果) hCG投与群において, 精巣内 aromatase 活性の上昇と精巣内T, E2濃度の増加, 精細管直径の縮小が認められた. hCG+A. I. 投与群においてはこれらの変化は認められなかった. また, E2投与群における精巣内E2濃度の増加, 精巣内 aromatase 活性の低下, 精細管直径の縮小を認めた.
    (結論) 精巣内E2の増加が造精機能障害に強く関与していた. 従って, 精巣内 aromatase 活性の上昇とこれによる精巣内E2濃度の増加が, 男性不妊症の原因の一つである可能性があると考えられた.
  • 谷口 光宏, 蓑島 謙一, 竹内 敏視, 酒井 俊助, 出口 隆, 河田 幸道, 佐藤 久美子, 原 明
    1997 年88 巻7 号 p. 658-663
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) ポリアミンは細胞増殖因子と考えられている. N-butyl-N-(4-hydroxybutyl) nitrosamine (以下BBNと略) 誘発ラット膀胱癌モデルを用い, 膀胱癌の発癌過程におけるポリアミンの関与につき検討した.
    (対象と方法) 生後5週齢 Fischer 344系雄ラットに, 飲用水として0.05%BBNを20週まで投与し膀胱癌を発生させ, 膀胱組織中及び血中の3つのポリアミン, ジアミン, スペルミジン, スペルミンを分別定量した.
    (結果) BBNにより投与8週目には5匹中4匹に過形成が, 12週目には5匹中2匹に乳頭腫が, 20週目までにはすべてに移行上皮癌が発生した. 膀胱組織中および血中ともに, 総ポリアミン値はBBN投与群が水道水のみを飲用した対照群に比べ有意に高値であった. 総ポリアミンの高値は, 3つのポリアミンのうち主にスペルミジンの増加によるものであり, 腫瘍の発生に一致して増加がみられた.
    (結論) ポリアミンは膀胱癌発生およびその進展の指標の一つとして利用できる可能性が示唆された.
  • 島田 憲次, 細川 尚三, 松本 富美, 松本 成史
    1997 年88 巻7 号 p. 664-669
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 胎児期に羊水過少のため特有の顔貌と四肢の変形を示し, 周産期に肺低形成による呼吸不全で死亡する病態を Potter sequence (PS) と呼ぶ. 最近の新生児医療の進歩により, 出生前にPSと考えられた症例にもその臨床経過に違いがみられることから, このような病態にもさまざまな移行型が存在するのではないかと推測し, PSとして剖検が加えられた症例の腎と肺の組織を検討した.
    (対象・方法) 剖検時にPSの臨床像を示した32例を対象に, 腎については糸球体数 (RGC) と腎異形成度 (1-4) を調べた. 肺は肺胞分岐数 (RAC) と肺/体重比 (L/B ratio) を用い検討した.
    (結果) 基礎疾患としては腎形成不全22例, 尿路閉塞7例, 嚢胞腎3例であった. 腎異形成度をみると8例10腎ではネフロンが一部に形成された grade-2 を示した. これらの腎でRGCを調べると, 正常児に比べて糸球体の数は遙かに少なかった. L/B ratio をみると25腎 (85%) が肺低形成の基準を満たしており, 残り4例も正常に比べて遙かに低値を示した. RACが判定できた22/24例では正常に比べて低い値を示した. 異形成度が grade-2の症例では他と比べて肺は大きく成長していた.
    (結論) 今回の検討から, いわゆるPSは spectrum disease であり, 腎・肺の組織学的所見から様々な移行型が存在することが示された.
  • 徳光 正行, 水永 光博, 金子 茂男, 北原 克教, 川上 憲裕, 敦川 浩之, 野田 剛, 八竹 直
    1997 年88 巻7 号 p. 670-676
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) オリンパス社製エンドサームUMW™を用いた経尿道的マイクロ波高温度治療 (TUMT) の効果について検討した.
    (方法) 前立腺肥大症患者28名に, 60分単回治療を行った. 前立腺内部が45℃以上になる領域が最大となるよう冷却水流量を毎分30mlに, また尿道表面を39℃に設定した.
    (結果) 治療24週後, 国際前立腺症状スコアーで41%, QOL値で37%, 最大尿流率で53%, 平均尿流率で62%の有意な改善を認めた. 残尿量, 前立腺容量に有意な減少は認められなかった. 3名の尿閉患者はすべて4週以内に自排尿可能となった. 治療および観察期間中, 重篤な副作用はなかった.
    (結論) エンドサームUMW™を用いたTUMTは, 従来の他の機種と同等な効果が得られ, 副作用も少なく, TUR-Pを施行困難な合併症を持つ前立腺肥大症患者に対しても安全かつ有用な治療法であると考えられた.
  • 伊藤 貴章, 和田 鉄郎, 古里 征国, 藍沢 茂雄
    1997 年88 巻7 号 p. 677-683
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (目的) 膀胱腫瘍の前立腺浸潤例について検討し, その組織学的浸潤様式や原発巣との関連について明らかにすることを目的とした.
    (方法) 最近10年間に当教室にて病理診断を行った前立腺を含む膀胱全摘例は83例あり, このうち移行上皮癌以外の2例を除いた, 前立腺浸潤11例と前立腺非浸潤例70例を対象とした. 浸潤形態を前立腺部尿道, 導管, 間質, 腺房, リンパ管との関係から分類し, 原発の膀胱腫瘍の grade, 深達度, 腫瘍の部位との関連について検討した.
    (結果) 導管への浸潤のみ認めた例が, 3例, リンパ管浸潤のみ認めた例が2例, その両方を認めた例が6例であった. 導管浸潤例のうち1例は前立腺部尿道に侵襲なく導管に独立した移行上皮癌を認めた. 前立腺浸潤例と非浸潤例の比較では, 前立腺浸潤を認めた例の方が原発巣が膀胱頚部及び三角部を含む例が有意に多く, リンパ管侵襲も有意に多かった.
    (結論) 膀胱腫瘍の前立腺への浸潤経路としては1, 経導管摘連続浸潤, 2. 経リンパ管浸潤, 3. 混合型が考えられた. 移行上皮癌の多中心性発生の一型として前立腺移行上皮癌が同時発生する可能性が示唆された. 原発巣が膀胱頚部及び三角部を含む場合, リンパ管侵襲を認める場合は, 前立腺浸潤を充分検索する必要があると思われた.
  • 阿部 良悦, 若林 庸道, 竹内 弘幸
    1997 年88 巻7 号 p. 684-693
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    (背景と目的) 適切な除水速度の実現により透析中の低血圧を予防する.
    (対象と方法) 血漿膠質浸透圧 (以下COP) の連続的測定から, 除水過程における循環血漿量の相対値 (以下%PV) および plasma refilling rate (以下PRR) の経時的な変化を推測した. 透析導入期にある12例における12回の限外濾過と1回の透析を対象に本法を行い, %PVとPRRの変動曲線のパターンを分析し, %PVmin (%PVの最低値), PRRmax (PRRの最大値) および95%t (%PVが95%に達するまでの時間) を求めて, 相互に比較した.
    (結果) %PV曲線の初期 (除水開始時) 下降が13例中6例に, またPRR曲線の初期上昇が5例にあり, 両者には密接な関係が認められた. %PVの初期下降があった6例とPRRの初期上昇のあった5例ではいずれもそれらがなかった群に比較して, PRRmax, 95%PVt値および体重は低く, 除水速度が相対的に高かったものと思われた.
    除水量が臨床的に適正と判断された9例中8例でPRR曲線の終期 (除水終了時) 下降が認められた. PRR曲線の終期下降がなかった5例中4例では, 臨床的にはさらに平均1.8±1.07kg除水する必要があった.
    (結論) 本法が適切な除水速度および除水レベルの設定に有用であることが示唆された.
  • 佐藤 威文, 頴川 晋, 勝田 真行, 岩村 正嗣, 内田 豊昭, 小柴 健
    1997 年88 巻7 号 p. 694-696
    発行日: 1997/07/20
    公開日: 2010/07/23
    ジャーナル フリー
    66歳男性での骨転移を有する前立腺癌に対して, 酢酸ゴセレリン3.6mgおよびフルタミド375mgを用いて内分泌療法を開始したところ, 投与7週目に黄疸および重度の肝機能障害を認めた. ただちに治療を中止し, 肝庇護剤による保存的治療を行ったところ, 2ヵ月後には肝機能はほぼ正常値に回復した.
    フルタミドによる重度肝機能障害例は0.003-0.18%程度と稀であるものの, 諸外国では死亡例も報告されており, 本剤投与に関しては定期的な肝機能検査などの十分な経過観察が必要と思われた.
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