日本泌尿器科学会雑誌
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膀胱腫瘍の前立腺浸潤様式の検討
伊藤 貴章和田 鉄郎古里 征国藍沢 茂雄
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1997 年 88 巻 7 号 p. 677-683

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抄録

(目的) 膀胱腫瘍の前立腺浸潤例について検討し, その組織学的浸潤様式や原発巣との関連について明らかにすることを目的とした.
(方法) 最近10年間に当教室にて病理診断を行った前立腺を含む膀胱全摘例は83例あり, このうち移行上皮癌以外の2例を除いた, 前立腺浸潤11例と前立腺非浸潤例70例を対象とした. 浸潤形態を前立腺部尿道, 導管, 間質, 腺房, リンパ管との関係から分類し, 原発の膀胱腫瘍の grade, 深達度, 腫瘍の部位との関連について検討した.
(結果) 導管への浸潤のみ認めた例が, 3例, リンパ管浸潤のみ認めた例が2例, その両方を認めた例が6例であった. 導管浸潤例のうち1例は前立腺部尿道に侵襲なく導管に独立した移行上皮癌を認めた. 前立腺浸潤例と非浸潤例の比較では, 前立腺浸潤を認めた例の方が原発巣が膀胱頚部及び三角部を含む例が有意に多く, リンパ管侵襲も有意に多かった.
(結論) 膀胱腫瘍の前立腺への浸潤経路としては1, 経導管摘連続浸潤, 2. 経リンパ管浸潤, 3. 混合型が考えられた. 移行上皮癌の多中心性発生の一型として前立腺移行上皮癌が同時発生する可能性が示唆された. 原発巣が膀胱頚部及び三角部を含む場合, リンパ管侵襲を認める場合は, 前立腺浸潤を充分検索する必要があると思われた.

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