2016 年 1 巻 2 号 p. 63-80
質量分析法によるプロテオミクス解析では,他のオミックス科学と同様,データのコンピュータ解析の過程が必須である.しかしゲノム科学やトランスクリプトーム解析に比べれば,質量分析法やプロテオミクスのためのバイオインフォマティクス,或いは解析手法・ソフトウェアは未だ発展途上であり,未解決の問題が多数残されている.更に,この状況に起因する多くの誤解や,特に実験系の研究者には扱いにくい技術的な問題も生じている.本稿ではこれらの問題を踏まえて,タンパク質の同定過程,特にデータベース検索法とそれに関連する基本的な事項について,プロテオミクス初心者を念頭に解説する.具体的には,de novoシークエンシング法とデータベース検索法の対比,PTM探知のための手法が検索結果に及ぼす影響,生命科学データベースの概観とデータベース解析への応用上での要注意点などについて述べる.