日本プロテオーム学会誌
Online ISSN : 2432-2776
ISSN-L : 2432-2776
1 巻, 2 号
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教育セミナー:プロテオミクス熊の巻2015
総合論文
  • 上家 潤一, 相原 尚之, 代田 欣二
    2016 年1 巻2 号 p. 57-62
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    質量分析計を用いたタンパク質定量法として,安定同位体標識ペプチドを内部標準とし,Selected Reaction Monitoring(SRM)で検出する内部標準法が広く普及している.SRMによるタンパク質定量は,①測定対象ペプチドの選択と標識ペプチドの作成,②SRM transitionの作成,③試料の酵素消化,④質量分析とデータ解析から構成される.近年リリースされたSkyline Softwareはペプチドについて,各社の質量分析計に適したtransitionを作成することができる.本ソフトウェアを用いることで,①測定ペプチドの選択および②transitionの作成をスムーズに行うことが可能である.③試料の酵素消化はプロテオミクス研究の基礎であるが,現状における定量プロテオミクスの最大の問題点でもある.すなわち,内部標準を試料処理後に添加するため,処理過程における試料損失が補正されておらず,本法で求める定量値は過小評価されている可能性がある.本論文では,我々が行っている前処理過程における試料損失を評価するための取り組みを紹介する.

総説
  • 吉沢 明康
    2016 年1 巻2 号 p. 63-80
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    質量分析法によるプロテオミクス解析では,他のオミックス科学と同様,データのコンピュータ解析の過程が必須である.しかしゲノム科学やトランスクリプトーム解析に比べれば,質量分析法やプロテオミクスのためのバイオインフォマティクス,或いは解析手法・ソフトウェアは未だ発展途上であり,未解決の問題が多数残されている.更に,この状況に起因する多くの誤解や,特に実験系の研究者には扱いにくい技術的な問題も生じている.本稿ではこれらの問題を踏まえて,タンパク質の同定過程,特にデータベース検索法とそれに関連する基本的な事項について,プロテオミクス初心者を念頭に解説する.具体的には,de novoシークエンシング法とデータベース検索法の対比,PTM探知のための手法が検索結果に及ぼす影響,生命科学データベースの概観とデータベース解析への応用上での要注意点などについて述べる.

  • 荒川 憲昭, 平野 久
    2016 年1 巻2 号 p. 81-87
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    がんは主要な死因の一つである.近年,プロテオミクス技術が飛躍的に発展しており,がんを早期に検出するための新しい血液バイオマーカーの発見が切望されている.しかし,臨床応用されたバイオマーカーはほとんどない.血清あるいは血漿サンプルのプロテオーム解析は難しく,肝臓が産生するタンパク質が豊富に存在する複雑な生体試料中から,がん細胞が産生する微量タンパク質を同定することは容易でない.一方,がん細胞の培養上清は,「セクリトーム」と呼ばれる,がん細胞が分泌・放出するタンパク質や膜タンパク質の断片などを豊富に含んでおり,バイオマーカー探索研究に役立つと期待されている.ところが,セクリトーム解析を行う際にも,サンプル調製から,候補タンパク質の絞り込み,測定系構築に至って様々な工夫が必要である.本論文では,特に,培養細胞を起点としたバイオマーカー探索のための技術的な側面と,利点や欠点についても焦点を当てながら,がん細胞株のセクリトーム解析を通して培われてきた知見を紹介する.

シンポジウム:プロテオミクス技術の最前線
テクニカルレポート
  • 松田 史生
    2016 年1 巻2 号 p. 89-94
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    ターゲットプロテオーム解析は,液体クロマトグラフィー―三連四重極質量分析を用いたペプチドの定量分析であり,低分子化合物の定量分析と基本的な考え方を共有している.一方,サンプル調製,ナノLCの取り扱い,SRMアッセイの作成およびデータ解析など,ターゲットプロテオーム解析に特有の技術も必要とされる.近年になってサンプル調製のプロトコル化やキット化が進み,ナノLCも定量分析に必要な安定性を持つようになった.また,SRMアッセイ法の作成およびデータ解析を支援するソフトウェアの開発も進み,ターゲットプロテオーム解析を研究に取り入れる環境が整いつつある.

  • 増田 豪, 石濱 泰
    2016 年1 巻2 号 p. 95-100
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    筆者らは相間移動溶解剤(Phase Transfer Surfactant,PTS)を用いたショットガンプロテオミクス用の前処理方法を報告してきた.本方法の特徴は,酸性条件化でPTSの疎水性度が上昇することを利用して酢酸エチルを用いた液液分配でPTSを試料溶液から除去できる点である.PTSとして陰イオン性界面活性剤であるデオキシコール酸ナトリウムおよびラウロイルサルコシン酸ナトリウムを用いており,これら溶解剤は脂溶性の高い膜タンパク質でも細胞質基質タンパク質と同等に定量的に可溶化できるほど溶解能が高い.興味深いことに,これら溶解剤は消化酵素の活性を促進する効果を併せ持っている.PTS法はFilter–aided sample preparationや酸分解性界面活性剤であるRapiGestを用いた方法よりも多くのタンパク質を同定できることが示された.PTS法はこれまで多様な試料に適用されており,膜プロテオミクスだけでなく通常のショットガンプロテオミクスにも効果的な前処理方法である.

総説
  • 松本 雅記
    2016 年1 巻2 号 p. 101-106
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー

    質量分析計の感度や速度,さらには分解能の向上によって網羅的なタンパク質同定・定量が可能となっている.しかしながら,現在の主流であるdata-dependent acquisition(DDA)による手法は技術的な制約から高深度の分析を多検体に対して行うことは困難である.近年MRMなどのターゲット・プロテオミクスの手法が確立され,ハイスループットに任意のタンパク質の正確な定量が可能になり,新たなプロテオーム解析基盤を提供しつつある.本総説ではターゲット・プロテオミクスを中心とした定量プロテオミクス技術の最新動向を紹介するとともに,その利点を生かすために最も必要な試料調製について解説する.

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