2021 年 6 巻 1 号 p. 9-16
生体内のタンパク質の多くは,他のタンパク質と相互作用し複合体を形成することにより機能している.特に高等生物では,複合体タンパク質形成はタンパク質の機能制御機構の1つであることが明らかである.そのため複合体形成の理解を助ける相互作用タンパク質解析は,生物の高次機能を解明するための重要な研究テーマといえる.相互作用タンパク質を解析する手法として,近位依存性ビオチン化酵素を目的タンパク質に融合し,近接タンパク質をビオチン標識するBioID法の技術が開発された.最近我々は,膨大なゲノム配列データを基盤にin silicoにより祖先型タンパク質をデザインするアルゴリズムを用いて,新たな近位依存性ビオチン化酵素ancestral BirA for proximity-dependent biotin identification(AirID)の開発を行った.本総説では,近位依存性ビオチン化酵素として代表的なBioIDとTurboIDおよびAirIDの概要と,近位依存性ビオチン化酵素を用いたタンパク質相互作用解析の例について紹介する.