2023 年 8 巻 2 号 p. 43-51
近年,水素重水素交換質量分析法やフットプリンティング質量分析法で得た相互作用分子の結合によるMS信号の変化をX線結晶構造にマッピングすることで,複合体の結晶構造解析に依らずに相互作用などを捉えることが可能となってきた.このような成功がある一方で,これらの質量分析計による手法で得た情報が構造生物学で得た立体構造と一致しない矛盾も生じている.本研究では,質量分析からの構造情報と,ヒト血清アルブミンの27個の高分解能なX線結晶構造を比較してこの矛盾が何によって起因しているかを考察し,質量分析で得られる構造情報は溶液NMRのように溶液中のアンサンブル状態を解析できる可能性を明らかにした.本研究で得られた知見は,質量分析計がさまざまな生理条件下での溶液中のタンパク質の構造状態を解明する上で有用なツールとなる可能性を示唆している.