日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
鳥類の視床下部•下垂体系の構造と機能
見上 晋一
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1973 年 10 巻 1 号 p. 1-11

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抄録
鳥類の間脳は乳頭体を欠き, また中脳の視葉が大きく発達しているので, 哺乳類のものとは形態が著しく異なり, 神経核も神経細胞が一般に分散している傾向がある。鶏の視索上核は視索前野まで拡がり, 3つの細胞群からなるが, 室旁核は第3脳室の壁にあって主部と副部の2群に分かれる。いづれもGOMORI染色陽性の神経分泌物を含む大型神経細胞からなり, 脱水によって細胞は活動化し分泌顆粒を失うので, 後葉ホルモンの分泌細胞と考えられる。鳥類の漏斗核 (隆起核) は大型および小型神経細胞がモザイク状に配列して3層の細胞群をなし, 正中隆起に adrenergic 腺維を送り隆起核下垂体路を形成する。漏斗核は部位によって機能的分化があるものと思われ, 特に性機能に重要な支配的意義をもつものと思われる。
鳥類の正中隆起は前正中隆起と後正中隆起の区別が明瞭で, 前正中隆起の外層には視索前野から来るGOMORI陽性の神経分泌物が集積するが, 後正中隆起の外層はそれを含まず, 主として漏斗核から来る adrenergic 線維が分布する。前正中隆起外層には5型の神経腺維が存在し, それぞれ特定の大きさと形の顆粒を含み, 各種の実験処理 (去勢, 甲状腺摘出, 副腎摘出など) によって特定の顆粒が増減するので, これらの顆粒は放出因子と関係があるものと考えられる。また正中隆起の表面を覆う第一次毛細血管叢は漏斗動脈の分枝を受けるが, 前正中隆起と後正中隆起は別々の血管叢で覆われ, 両者は互いに連絡がないのみならず, 前者は前門脈群を作って前葉の前部腺体に流入するが, 後者は後門脈群を作って後部腺体に流入する。従って鳥類の下垂体前葉は正中隆起, 下垂体門脈によって部位的に異った支配を受けるものと考えられる。すなわち前部腺体は前門脈群を介して前正中隆起によって支配され, 後部腺体は後門脈群を介して後正中隆起の支配を受ける。
鳥類の腺性下垂体は中間部を欠き, 前葉は前部腺体と後部腺体の2部に分かれ, 両者は細胞構成を異にするのみならず, その生理機能をも異にする。すなはちTSH, ACTH, FSH, LTH (プロラクチン) は前部腺体から分泌され, STHとLHは後部腺体から分泌されるとする説が有力である。
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