抄録
産卵鶏卵巣の抗原性を検索するために, 産卵鶏卵巣(直径1mm以上の卵胞除去) の食塩可溶抽出液に対する抗血清を家兎に免疫して作成し, OUCHTERLONY の寒天ゲル内沈降反応法と免疫電気泳動法によって特異抗原を調べた。
1. 末吸収抗血清は産卵鶏卵巣に対して7本, 他の臓器抽出液や血清に対して4~6本の沈降線を産生したが,哺乳動物の卵巣に対しては全く反応しなかった。2. 雄鶏血清で吸収された抗血清では卵巣に対して4本, 他の臓器抽出液や産卵鶏血清に対して1~2本の沈降線が観察された。産卵鶏血清で吸収された抗血清では卵巣に対して2本, 肝臓や脾臓や肺臓に対して1本の沈降線が観察された。卵巣で認められた2本の沈降線のうち1本は肝臓•脾臓•肺臓と同一の反応のものであった。3. 雄鶏血清と脾臓で吸収された抗血清は卵巣に対してだけ沈降線を産生した。これらの結果から卵巣に臓器特異抗原が含まれていることが明らかになった。免疫電気泳動法によってこの卵巣臓器特異抗原の易動度はβグロブリンに属するものであった。