抄録
メチオニンの過剰給与がヒナの発育や飼料の利用性に及ぼす影響を調べた。供試ヒナは体重の均一な1週齢の白レグ雄45羽を用い, これを1群5羽の9群に分けた。試験区および対照区にそれぞれ4群ずつ割りあて, 電熱式バタリー育雛器で14日間飼育した。また残りの1群は実験開始時の体成分を知るために, 区分け直後に屠殺した。対照飼料の組成は, カゼイン18%, ゼラチン9%, コーンスターチ38.1%, グルコース20%, コーンオイル4%, ビタミン混合物1.22%, ミネラル混合物5.63%, セルロース3.5%, 塩化コリン0.25%およびDL-メチオニン0.3%とし, メチオニン過剰飼料は対照飼料に2.7%のDL-メチオニンをコーンスターチと置きかえて添加した。飼育試験終了後, 無作為に各群から2羽ずつを選んで屠体分析に供した。また残りのヒナからは心臓より血液を採取し, 各試験区ごとにプールして血漿アミノ酸含量を測定した。
ヒナの増体重および飼料摂取量は, メチオニン過剰飼料の給与によって対照区の65%および39%減少した。屠体成分は脂肪含量が対照区の7.8%に対し, メチオニン過剰区では6.9%に減少したが有意な差ではなく, 蛋白質含量にも差は認められなかった。しかしメチオニン過剰飼料を摂取したヒナの脂肪, 蛋白質およびエネルギーの蓄積量は体重差を反映して著しく低下し, 減少率はそれぞれ対照区の62, 61および61%であった。
飼料エネルギーの代謝率はいずれの区も81%で, メチオニン過剰添加による影響はみられなかった。しかし摂取代謝エネルギーの屠体への蓄積率は, メチオニン過剰給与によって対照区より34%減少した。また摂取した窒素の蓄積率も対照区に比して38%減少した。
メチオニン過剰飼料を摂取したヒナの血漿アミノ酸組成は対照に比べて著しく変動した。すなわち血漿メチオニンは19倍に増加し, リジン, バリン, フェニルアラニン, シスチンおよびヒスチジンも対照の1.5倍に増加したが, グリシン, ロイシンおよびグルタミン酸は対照の2/3以下に減少した。