抄録
高濃度のセレン (Se) を含むビール酵母と亜セレン酸ナトリウムを用いることによって, 鶏ヒナにおけるSeの利用率とSeの過剰毒性について, 酵母Seと無機態Seの間で比較, 検討した。また, ゲルマニウム (Ge) のSe毒性に対する効果も合わせて検討した。
その結果, 酵母Seは無機態Seよりも毒性が弱かった。また, GeはSeの過剰毒性を緩和することも, 強めることもなかった。次に, 酵母Seの利用率は無機態Seの利用率の73.4%であり, その95%信頼範囲は85.1~61.7%であった。ビール酵母蛋白の消化率は約82%と推定され, この値は酵母Seの利用率の95%範囲に含まれる。ここではSeの利用率は, 吸収されたSeの真の利用率とSeの消化率の積の形で求められている。従って, 吸収後のSeの真の利用率が酵母Seと無機態Seの間で等しいと仮定し, さらに酵母Se, 無機態Seの消化率を各々82%, 100%と仮定すれば, 酵母Seと無機態Seの利用率の差は消化率の差として説明できる。また, また, 飼料中SeレベルにSeの利用率を乗じて計算された有効Seレベルとヒナの平均増体量の間には負の直線関係が観察された。このことから, 酵母Seと無機態Seの毒性の差は両者の利用率の差に帰因するものと推察できる。