抄録
卵黄•卵白比の高低選抜を7世代にわたり実施した8選抜系 (SL対SS, MSL対MSS, MLL対MLS, LL対LS) と対照系において, 選抜に伴う卵形質の相関反応を考察した。また, 直接選抜反応との関連性についての検討も行った。観察した卵形質は卵黄重, 卵白重, 卵殼重, 卵重, 卵長, 卵幅, 卵形係数である。相関反応の評価には各系統の平均値 (集団平均値), 対照系からの偏差 (実現相関反応) および高低選抜系間の差をもって表わし, 世代に対する推移を比較検討した。
得られた結果は次の通りである。
1) 卵重の集団平均値は基礎集団の平均値に回帰する傾向を示した。すなわち, 世代を通して, 平均卵重の小さい集団からの高低選抜系, SLとSSは共に増加し, 平均卵重の大きい集団からの選抜系, LLとLSは減少傾向を示した。この現象は選抜の早い世代に顕著であった。
2) 卵黄重の平均値はいずれの選抜系も世代の進行に伴い増加した。特に, 高選抜系で顕著であり, 世代当り, SLでは0.51g, MSLでは0.44g, MLLでは, 0.28g, LLでは0.21gが推定された。これらはいずれも有意で直線的なものであった。
3) 卵白重と卵重の実現相関反応はF2およびF3世代以降に低選抜系で明らかな増加を示した。最も大きな反応はSSとLLで認められ, 世代当りの実現相関反応量はSSで0.48g (卵白重), 0.84g (卵重), LLで-0.74g(卵白重), -0.60g (卵重) が推定された。
4) 卵殼重と卵幅には相対的に小さい相関反応が認められ, 世代に対する推移は卵白重や卵重に類似した傾向を示した。卵長と卵係形数は世代により変化したが, 高低選抜系で一定した傾向は観察されなかった。
5) 高低選抜系間の差に基づく相関反応では, 世代当り卵白重で0.40gから0.73gが推定され, 卵黄重のそれよりも大きく, いずれも有意であった。特に, 平均卵重の大小両端の集団からの選抜系間 (LL-LSとSL-SS) に顕著であった。
6) 分散分析法および親子回帰法から推定した卵形質の遺伝率には高低選抜系で大きな差異が認められなかった。また, 卵形質相互間の表型相関係数にも変化がなかった。しかし, 遺伝相関係数には選抜系に若干の相違が推定された。例えば, 卵黄•卵白比と卵黄重間では-0.29~0.61, 卵白重間では-0.62~0.17, 卵重間では-0.45~0.35と広い範囲の推定値が得られた。さらに, 遺伝相関行列の因子分析の結果から, 卵黄•卵白比と卵黄重はそれぞれ他の卵形質とその属性を異にすると推察した。