日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
各種家禽卵の性状ならびに成分の比較
5. 水平式ポリアクリルアミドグラジェント薄層ゲル電気泳動によるニワトリ卵白タンパク質の個体変異
田名部 尚子小川 宣子
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1980 年 17 巻 5 号 p. 242-248

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抄録
岐阜県種鶏場白色レグホーン産卵鶏群の同日産卵の卵より卵白を採取し, 水平式ポリアクリルアミドグラジェント薄層ゲル電気泳動法によってタンパク質の泳動像を調べた。孵白タンパク質の泳動帯は, 易動度の速い方からNo. 1~No. 15の泳動域に分離された。No. 7. 8のオボグロブリンG3より易動度の遅いNo. 9に, オボグロブリンG4のG3とは異なる個体変異を持つタンパク質が分離された。オボグロブリンG3には, 3つの個体変異があり, これはG3座上の共優性遺伝子G3AとG3Bによって支配されていると推定された。その遺伝子頻度は, G3Aは0.100, G3Bは0.900であった。オボグロブリンG4には, 3つの個体変異があり, これらはG4座上の共優性遺伝子G4AG4Bによって支配されていると推定された。その遺伝子頻度はG4 0.891, G4Bは0.109であった。No. 2のプレアルブミンには新たな個体変異の存在が認められた。
No. 3,4,5はオボアルブミンの泳動帯で, 従来の報告7)に示されたOv座上の共優性遺伝子OvOBに支配された3種の個体変異が認められた。遺伝子頻度はOvA 0.900, OvB 0.100であった。OvAOvBは, それぞれG3BG3Aに強い連関が認められた。
No. 10はオボグロブリンG2の泳動帯で, G2座上にある共優性遺伝子G2AG2B2)に支配される3つの個体変異が認められた。遺伝子頻度はG2A 0.305, G2B 0.695であった。No. 13のトランスフェリンは全てB型であった。
新鮮卵白 (2倍希釈, pH 8.8~8.9) を70°Cで5分加熱したところ, プレアルブミン (No. 1, 2), オボアルブミン (No. 3, 4, 5), オボグロブリンG3 (No. 7, 8), オボグログリンG4 (No. 9), No. 11のプレトランスフェリン, オボトランスフェリン (No. 13) の熱安定性が低いことが認められた。3週または5週保存した卵白 (2倍希釈, pH 9.5~9.6) では, プレアルブミン (No. 1,2), オボアルブミン, オボグロブリンG3は熱安定性が増した。オボグロブリンG2 (No. 10), オボムコイド (No. 6), No. 12のプレトランスフェリン, ポストトランスフェリン (No. 14, 15) は, 25°Cで0, 3, 5週保存のいずれの卵白でも熱に安定であった。これに対して, オボグロブリンG4, オボトランスフェリン, No. 11のプレトランスフェリンは0, 3, 5週保存のいずれの卵でも, 70°C 5分の加熱処理で安定ではなかった。
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