日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
岐阜地鶏に出現した頭頸部黒色羽毛の遺伝について
岡野 香
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 18 巻 3 号 p. 171-177

詳細
抄録

岐阜地鶏の成鶏羽装は赤笹型または黄笹型である。しかしながら赤笹羽装を示す鶏の一群から頭頸部背面上部に黒色羽毛を持つ鶏が出現した。この黒色羽毛はふ化後6~8週齢時に現われる。雄においてはこれらの黒色羽毛は約20週齢時頃から消え, その後は正常羽毛になるので, 成鶏雄では正常鶏と区別できなくなるが, 一方, 雌では頭頸部黒色羽毛はその後成鶏となっても維持される。本報は頭頸部黒色羽毛の遺伝, およびこの遺伝子とE-locus のe+またはey遺伝子との関係について検討したものである。
交配試験の結果, 頭頸部背面上部の黒色羽毛を決定する遺伝子は常染色体上の優性遺伝子であることが明らかとなり, またこのような羽装についての報告がなされていないので, 遺伝子記号としてBhを用いるのが適当であると思われる。このBh遺伝子は赤笹型 (e+e+, e+ey, ey ey雄およびe+e+, e+ey雌) においては黒色羽毛を発現させるが, 黄笹型 (ey ey雌) に対しては効力を持たない。
さらに E-locus がe+eyである縦斑綿毛ヒナは縦斑の差によって性判別できる。すなわち明瞭縦斑綿毛ヒナの約85%が雌, 不明瞭縦斑綿毛ヒナの約93%が雄であった。しかしながらBh遺伝子を持ったヒナ (e+ ey Bh bh)では縦斑による性判別が不正確になり, 明瞭縦斑綿毛ヒナの約70%が雌, 不明瞭縦斑綿毛ヒナの約96%が雄であった。このことから, Bh遺伝子は一部の個体において縦斑を濃くして, 綿毛色の差を明瞭にする働きを持っているものと思われる。その結果, Bh遺伝子を持つ一部の雄は大部分の雌と同様に縦斑が明瞭になるのであろうと考えられる。

著者関連情報
© 日本家禽学会
前の記事 次の記事
feedback
Top