日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
ヒナの好異球の貧食能力及び殺菌能力に及ぼす絶食の影響
近藤 康博谷口 吉弘田辺 昭
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1986 年 23 巻 5 号 p. 269-275

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抄録
5週齢のヒナの血中からのビール酵母のクリアランスに及ぼす24時間あるいは48時間の絶食の影響を調べた。また,これらのヒナの腹腔より採取した好異球の貧食能力と殺菌能力に対する絶食の影響について測定した。同時に,絶食させたヒナの末梢血中のリンパ球,好異球及び単球数並びに血漿コルチゾール濃度についても測定を行った。
末梢血中白血球数の変化や血漿コルチゾール濃度の上昇から,24時間及び48時間の絶食は,ヒナに対するストレス要因であることが知られた。ビール酵母の血中からのクリアランスは,ビール酵母の投与後から60分の間,絶食によって遅延した。遅延の程度は,絶食時間の長さに比例し,48時間絶食ヒナでは,24時間絶食ヒナに比べて,遅延の程度は大きかった。ビール酵母による3H-ウリジンの取り込みの阻害率から測定された好異球の貧食能力は,48時間絶食ヒナでは変化がなかった。24時間絶食ヒナでは,貧食能力は,むしろ上昇し,好異球の貧食能力には,絶食による低下は認められなかった。一方,好異球に貧食されたビール酵母の生存率を,貧食後,経時的に測定した結果から,好異球におけるビール酵母の殺菌処理は,絶食によって低下することが明らかとなった。また,殺菌能力の低下の程度は,絶食時間の長さに比例した。以上の結果は,絶食は,好異球の異物貧食能力を低下させず,貧食された異物の殺菌処理能力に阻害作用を及ぼし,この殺菌処理能力の低下が,血中からの異物クリアランスの遅延の一因となっていることを示している。
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