抄録
実験1では,トウモロコシに比べてフィターゼ活性の高い大麦および小麦の使用による雛の排泄リン量低減の可能性を調べるため,飼養試験と出納試験を行った。非フィチンリン(NPP)を0.40, 0.36, 0.32あるいは0.28%含む大麦飼料,小麦飼料,およびNPP0.40%を含むトウモロコシ飼料を6日齢の白色レグホン種雄雛に2週間給与した。試験終了前の4日間にはリンの出納試験を実施した。その結果,NPP0.40%, 0.36%および0.32%の大麦飼料および小麦飼料を給与した雛の飼養成績および趾灰分含量は,トウモロコシ飼料の場合とほとんど同じであった。大麦飼料および小麦飼料を給与した雛のリン蓄積率は,トウモロコシ飼料を給与した雛に比べて高い傾向であった。雛のリン排泄量は大麦飼料,小麦飼料ともにNPP水準が低くなるほど有意に少なくなった。以上の結果から,麦類を飼料中に50%配合することにより,NPP水準を0.40から0.32%にまで低下することができ,これにより雛の排泄リン量を約20%低減することが可能であることが示唆された。
実験2では,大麦および小麦に含まれるフィターゼ活性の消化管における消失を調べた。大麦飼料,小麦飼料あるいはトウモロコシ飼料を給与した雛を,飼料給与停止後,0, 10, 30, 60および150分後に屠殺し,そ襄内容物の無機リン含量および消化管内容物のフィターゼ活性を測定した。その結果,そ嚢内容物の無機リン含量(mg/g乾物)は,トウモロコシ飼料を給与した雛では時間の経過とともにわずかに漸減する傾向を示した。一方,大麦飼料および小麦飼料を給与した雛では時間の経過とともに明らかに増加し,飼料給与停止後60分および150分におけるそ嚢中の無機リン含量は,飼料摂取後10分の値に比べて約2倍となった。大麦飼料,小麦飼料を給与した雛の筋胃内容物中のフィターゼ活性は認められなかった。また,筋胃内容物を小腸pHに近いpH7に調整しても,フィターゼ活性は認められなかった。以上の結果から,大麦,小麦に含まれるフィターゼは主にそ嚢において作用すること,その活性は胃においてほとんど活性を失うことが示唆された。