日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
鶏初期胚における始原生殖細胞の起源,微細構造及びDNA量に関する研究
前田 照夫寺田 隆登
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1997 年 34 巻 1 号 p. 27-35

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抄録

鶏初期胚における始原生殖細胞(PGCs)の起源と構造を明確にするために,ステージ2,3,4および13-15の胚におけるPGCsを透過型電子顕微鏡で観察した。また,鶏PGCsの分裂能を明らかにするために,ステージ13-15の胚におけるPGCsのDNA量を共焦点レーザー顕微鏡で測定した。
ステージ4胚のPGCsは生殖三ヶ月環部の内胚葉に近接した所に位置していた。ステージ4および13-15胚のPGCsは球形であり,多数のグリコーゲン顆粒と多くの脂肪小滴および不定形の高電子密度の塊をもつ大きな核を有していることが共通した特徴であった。しかし,ステージ4胚のPGCsはステージ13-15胚のそれと比較して大きく,また卵黄顆粒を多く含みゴルジ体も発達していた。一方,ステージ2と3胚では,構造的にPGCsに類似した細胞が原条前方部の内胚葉近くや外胚葉下に位置しており,外胚葉から遊離しつつある像も観察された。また,ステージ2とステージ3の胚におけるこれらの細胞の分布状態を比較した場合,後者の方が前者に比較して,多くの細胞が内胚葉近くに位置していた。ステージ13-15の胚におけるPGCsの核内DNA量はPGCsによって異なり,核内DNA量のヒストグラムでは2つのピークが存在し,分裂期のPGCsも観察された(2.1%)。
以上の結果より,PGCsの起源は外胚葉細胞であり,PGCsの大きさと構造は胚の発育ステージにより変化すると推定された。また,生殖三ヶ月環から生殖原基への移動期のPGCsは核内DNA量が周期的に変化していると考えられた。

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