日本家禽学会誌
Print ISSN : 0029-0254
フィジーならびに西サモア諸島における在来鶏および赤色野鶏のDNAフィンガープリント分析
山下 秀次西田 隆雄恒川 直樹Peter MANUEL岡本 新前田 芳實橋口 勉
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1997 年 34 巻 1 号 p. 9-20

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抄録

DNAフィンガープリント(DFP)を遺伝指標として,フィジーならびに西サモア諸島における在来鶏および赤色野鶏の遺伝的類縁関係について分析を行った。材料には,フィジー諸島の5島嶼(Viti Levu, Vanua Levu, Taveuni, Makogai,およびKoro)ならびに西サモア諸島の2島嶼(UpoluおよびSavai'i)において採取した合計37羽の鶏の血液を用いた。核DNAは濾紙に吸着•乾燥させた血液より抽出•精製し,制限酵素Hinf Iで消化した。DFP分析は,プローブに(TG)nを用い,individual DFPおよびpopulation DFPを併用して行った。DFPの遺伝的類似性の評価には,BS値を算出し,遺伝的距離の推定にはBS値より算出したサイトあたりの塩基置換数を用い,非加重結合法によってデンドログラムを作成した。
本研究において乾燥した血液から核DNAを抽出•精製したところ,DFP分析に十分な収量と純度の高分子のDNAが精製された.また,DFP分析の結果,1)population DFPのデータはindividual DFPのデータを集積したものであることが確認された。2)フィジーならびに西サモア諸島の5島嶼の在来鶏においては,各在来鶏はそれぞれの島嶼に区分され,フィジー在来鶏と西サモア在来鶏はデンドログラムにおいてそれぞれ独立したクラスターを形成し,遺伝的隔たりが存在していることが示唆された。3)フィジー諸島の赤色野鶏においては,Makogai島の赤色野鶏と,Taveuni島およびKoro島の赤色野鶏はデンドログラムにおいてそれぞれ異なるクラスターに属した。さらに,これらの赤色野鶏は鹿児島大学の赤色野鶏とは多少離れた遺伝的類縁関係にあるものと考えられた。4) Taveuni島の交雑鶏については,遺伝的にわずかではあるが在来鶏に比べて赤色野鶏サイドに近いことが示唆された。

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