1995 年 41 巻 5 号 p. j9-j13
Orvus ES Paste(OEP)を用いてストロー法で製造したブタ凍結精子の融解後の形態を電子顕微鏡で調べた.試料作製法としては超薄切片法と急速凍結・ディープエッチング法を用いた.対照としてOEP無添加で製造した凍結・融解精子では,尾部は微細形態的に正常であったが,頭部には特徴的な変化,すなわち先体部を被う細胞膜の剥離と先体主部の膨化が見られた.先体主部には先体内容物は見られなかった.その他の精子頭部の微細構造には変化は見られなかった.OEPを用いた凍結・融解精子では,頭部,尾部共に微細形態的変化は認められなかった.これは融解後の精子の運動率,正常頭帽率,受胎率とあいまって,この凍結法が精子の保存に適していることを示す.OEPはブタ精子の凍結保存に極めて重要であるが,今回の電子顕微鏡的研究により,先体部を被う細胞膜および先体主部自体を安定に保つことによって精子の機能を保つことが解った.