Journal of Reproduction and Development
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原著
食肉処理場で採取した卵巣を用いた牛体外受精胚作出過程での細菌分離と細菌汚染が体外受精胚の発生能に及ぼす影響
内布 幸典増岡 和晃堤 尚三小森 敏宏音井 威重
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1996 年 42 巻 5 号 p. j1-j6

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抄録
牛体外受精胚の作出過程で用いた卵巣輸送用の生理食塩液,卵巣洗浄液,卵子吸引液,成熟培養液,媒精後2日目および8日目の発生培養液にペニシリン(PC)+ストレプトマイシン(SM)を添加した区並びに無添加の区を設け,それぞれについて細菌の分離および分離菌株の薬剤感受性の検討を行い,併せて体外受精胚の卵割率と胚盤胞への発生率を比較した.PC+SM添加区の卵巣輸送液および卵巣洗浄液からは,10 1~103Colony Forming Units(CFU)/mlの細菌が分離されたが,それ以降の卵子吸引液および各培養液からは分離されなかった.一方,無添加区においては,発生培養液を含む全供試材料から,10 1~106CFU/mlの細菌が分離された.また,卵巣輸送液から分離された細菌は,グラム陰性桿菌が主体を占め,その中でも腸内細菌が優勢で,分離菌株の多くは,ペニシリン系,マクロライド系,テトラサイクリン系,セフェム系に耐性を示した.PC+SM添加区の体外受精胚の卵割率および発生率は,抗生物質無添加区に比べ有意に高い値を示した(P<0.01).以上から,体外受精胚作出過程におけるPC+SMの添加は,細菌の除去並びに胚の発生に有効であることが示されたが,PCおよびSMに対し耐性を示す細菌が分離されたことから,胚による病原細菌の伝播を防御するためには抗菌範囲の広い抗生物質の選択が必要であることが示唆された.
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© 1996 Society for Reproduction and Development

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