1996 年 42 巻 5 号 p. j7-j13
精子の頭部と尾部がすべての精子で分離していた雄ブタが見出された.このブタの射出精子および精巣を光学顕微鏡と電子顕微鏡によって調べた.4回の射出精子の頭部と尾部の数の割合は頭部17.6±3.0%,尾部82.4±3.0%であり,その比率は1:4~5であった.離断尾部の運動率は23.8±4.8%であった.ほとんどの尾部の中片部には,細胞質滴様の構造物が存在していた.射出精子の微細構造では,基底小板が頭部にも尾部にも存在しなかった.尾部の中片部の細胞質滴様の構造物には,空胞または管状の構造が無数に見られた.その他の微細構造には異常は見られなかった.このブタの左の精巣は陰嚢内にあったが,右の精巣は腹腔内にあった.陰嚢内の精巣の微細構造では,頭帽期の精子細胞から異常が見られた.つまり,精子完成過程に中心子の対が核に接せず,正常な位置になかった.このために、近位中心子と核の間の機械的結合が出来なかったと推察される.さらに,基底小板は核膜上に形成されなかった.精細管の管腔内においても精子の頭部と尾部は分離していた.このことから,頭部と尾部の離断はすでに精子完成過程から起こっていたことがわかった.