Journal of Reproduction and Development
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42 巻, 5 号
June
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原著
  • 内布 幸典, 増岡 和晃, 堤 尚三, 小森 敏宏, 音井 威重
    原稿種別: 原著
    1996 年 42 巻 5 号 p. j1-j6
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    牛体外受精胚の作出過程で用いた卵巣輸送用の生理食塩液,卵巣洗浄液,卵子吸引液,成熟培養液,媒精後2日目および8日目の発生培養液にペニシリン(PC)+ストレプトマイシン(SM)を添加した区並びに無添加の区を設け,それぞれについて細菌の分離および分離菌株の薬剤感受性の検討を行い,併せて体外受精胚の卵割率と胚盤胞への発生率を比較した.PC+SM添加区の卵巣輸送液および卵巣洗浄液からは,10 1~103Colony Forming Units(CFU)/mlの細菌が分離されたが,それ以降の卵子吸引液および各培養液からは分離されなかった.一方,無添加区においては,発生培養液を含む全供試材料から,10 1~106CFU/mlの細菌が分離された.また,卵巣輸送液から分離された細菌は,グラム陰性桿菌が主体を占め,その中でも腸内細菌が優勢で,分離菌株の多くは,ペニシリン系,マクロライド系,テトラサイクリン系,セフェム系に耐性を示した.PC+SM添加区の体外受精胚の卵割率および発生率は,抗生物質無添加区に比べ有意に高い値を示した(P<0.01).以上から,体外受精胚作出過程におけるPC+SMの添加は,細菌の除去並びに胚の発生に有効であることが示されたが,PCおよびSMに対し耐性を示す細菌が分離されたことから,胚による病原細菌の伝播を防御するためには抗菌範囲の広い抗生物質の選択が必要であることが示唆された.
  • 伊藤 米人, 外山 芳郎, 野村 友宏
    原稿種別: 原著
    1996 年 42 巻 5 号 p. j7-j13
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    精子の頭部と尾部がすべての精子で分離していた雄ブタが見出された.このブタの射出精子および精巣を光学顕微鏡と電子顕微鏡によって調べた.4回の射出精子の頭部と尾部の数の割合は頭部17.6±3.0%,尾部82.4±3.0%であり,その比率は1:4~5であった.離断尾部の運動率は23.8±4.8%であった.ほとんどの尾部の中片部には,細胞質滴様の構造物が存在していた.射出精子の微細構造では,基底小板が頭部にも尾部にも存在しなかった.尾部の中片部の細胞質滴様の構造物には,空胞または管状の構造が無数に見られた.その他の微細構造には異常は見られなかった.このブタの左の精巣は陰嚢内にあったが,右の精巣は腹腔内にあった.陰嚢内の精巣の微細構造では,頭帽期の精子細胞から異常が見られた.つまり,精子完成過程に中心子の対が核に接せず,正常な位置になかった.このために、近位中心子と核の間の機械的結合が出来なかったと推察される.さらに,基底小板は核膜上に形成されなかった.精細管の管腔内においても精子の頭部と尾部は分離していた.このことから,頭部と尾部の離断はすでに精子完成過程から起こっていたことがわかった.
  • 榊原 弘之, 高木 光博, 山本 政生, 大江 正人, 鈴木 達行
    原稿種別: 原著
    1996 年 42 巻 5 号 p. j15-j20
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    牛胚の凍結保存における凍結保護剤としてのメチルセルソルブ(Methyle cellosolve;MC)の有効性を評価するために,まず体外受精胚を用いて冷却速度および使用濃度を検討し,次いで体内受精胚および体外受精胚を用いて直接移植法による受胚牛への移植試験を実施した.なお,その際エチレングリコール(EG)との比較を行った.1.3 M-MCの存在下で,体外受精由来胚盤胞を-6 Cで植氷後,毎分-0.3 Cあるいは-0.5 Cの速度で-30 Cまで冷却を続け,液体窒素中に浸漬した.融解後の生存性に冷却速度間で差は認められなかったが,脱出胚盤胞への発育率において毎分-0.3 Cで有意(P<0.01)に高い成績が得られた[57.5%(23/40) vs 25.7%(9/35)].植氷後の冷却速度として毎分-0.3Cを採用し, MCでは1.1 M, 1.3 Mおよび1.5 Mを,EGでは1.5 M, 1.8 Mおよび2.1 Mをそれぞれ用いて体外受精由来胚盤胞を凍結融解した結果,各濃度間で胚の生存率に有意差は認められなかったが,MCでは1.3 MおよびEGでは1.8 Mで生存率ならびに脱出胚盤胞への発育率が高い傾向を認めた.黒毛和種成雌牛に卵胞刺激ホルモンの減量投与法により過剰排卵を誘起し,人工授精後7~8日に回収した胚と体外授精由来胚盤胞を1.3 M-MC存在下で凍結保存し,融解後に凍結保護剤を除去することなく発情周期6~8日に受胚牛の黄体側子宮角に頸管経由法により直接移植した結果,それぞれ48.3%(14/29),47.6%(10/21)の受胎率が得られた.一方,1.8 M-EG存在下で体内受精および体外受精胚を凍結融解し直接移植した結果,それぞれ50.0%(16/32),63.0%(17/27)の受胎率が得られたが.MCで得られた受胎率との間に差は認められなかった.以上の成績から,MCは,EGと同様牛胚の直接移植を目的とした凍結保存のための凍結保護剤として有効であることが明らかとなった.
  • 山本 憲, 音井 威重, 小山 信幸, 立川 進
    原稿種別: 原著
    1996 年 42 巻 5 号 p. j21-j24
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    牛体外受精由来胚をI法では,1.4 Mグリセロールを含む0.2 Mシュクロース加20%牛胎児血清添加修正リン酸緩衝液(修正PBS),II法では,1.6 M 1, 2-プロパンジオール加修正PBS,III法では1.8エチチレングリコール加修正PBSを保存液として凍結保存し,融解速度が胚の生存性に及ぼす影響について検討した.I法では,ストロー内の胚(5個/ストロー)を含む液層(5~10 mm)の両端を空気層(3~5 mm)を介し0.2Mシュクロースで満たし,II法は同様に両端を0.3Mシュクロースで満たした.III法は全ての液層を保存液で充填した.胚を含むストローを-25~-30 Cまで緩慢に冷却し,液体窒素中で凍結保存した.ストローは,液体窒素中から直接10,20,30,40,50 Cの温水に移し,ストロー内の氷晶の消失を確認後直ちに,中味をシャーレに取り出し,胚は卵丘細胞と共培養して,胞胚腔回復率(生存率)及び脱殻胚盤胞までの発育率を比較した.I法での生存率は,融解速度による差は認められなかったが,発育率において,10 C区(462 C/分)で低値を示し(32%),融解速度が高くなるにつれて発育率も増加した.II法では,20 C区(876 C/分)の生存率および発育率がそれぞれ94%,77%で,他の区に比べ有意に(P<0.05)高かった.III法では融解速度に関わらず高い生存率(82~94%)および発育率(73~91%)が得られ,融解速度による差は認められなかった.
研究短報
  • 関沢 文夫, 斉藤 光男, 久利生 正邦, 飛田 府宣, 荒井 徹, 中原 達夫
    原稿種別: 研究短報
    1996 年 42 巻 5 号 p. j25-j27
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    一般農家で飼養されている牛を受胚牛として,胚移植後の流産の発生状況を明らかにするために,1987~1991年の間に実施した胚移植後の流産発生状況を調査した.ホルスタイン種および黒毛和種牛から採取した新鮮胚および凍結胚をホルスタイン種牛(未経産および経産)に非外科的に移植し,受胎した399頭を供試牛とした.4年間の合計流産発生率は8.8%(35/399)で,新鮮胚(9.0%)および凍結胚移植後の流産発生率(8.6%)に有意差は認められなかった.2胚移植,1胚移植および人工授精後非黄体側子宮角内への1胚の追い移植における流産発生率は,それぞれ13.5,8.5および3.2%で3者の間に有意差は認められなかった.胚移植後の日数別の流産発生率は,新鮮胚および凍結胚とも80日以内で有意に高く(p<0.05),それぞれ総流産頭数の46.7%および60.0%がこの期間に含まれていた.以上の結果から,新鮮胚および凍結胚移植後の流産発生率には有意差がなく,流産発生時期は新鮮胚および凍結胚ともに胚移植後80日以内に有意に多発することが認められた.
技術短報
  • 伊藤 貴子, 小西 正人, 武富 敏郎, 板倉 はつえ, 矢澤 慈人, 青柳 敬人
    原稿種別: 技術短報
    1996 年 42 巻 5 号 p. j29-j33
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    ウシ胚性幹細胞(以下ES細胞)樹立のために,より効率的にES細胞様コロニーを得ることを目的として,供試する胚の発育ステージならびに体内または体外受精由来胚の違いとES細胞様コロニーの形成率の関係について検討した.(細胞培養開始7日目に出現した細胞境界が不鮮明で島状をなしている未分化様のコロニをES細胞様コロニーとした.)使用したウシ胚は5~6日目の桑実胚と,7~8日目の胚盤胞で,それぞれ体内受精由来胚と体外受精由来胚について検討した.桑実胚はバイオカットを用いて透明帯を除去した後に細胞塊を0.1%トリプシン+0.05%EDTAに約1分間浸漬し,ピペッティングにて1~ 数個の細胞塊に分離して培養した.胚盤胞はマニピュレーターを用いてバイオカットで内部細胞塊を含む胚の一部を取り出し培養した.培地にはダルベッコ変法イーグルMEM培地にグルコース,重炭酸ナトリウム,非必須アミノ酸,β-メルカプトエタノール,および20%子牛血清を加えたものと,支持細胞としてマウス胎仔繊維芽細胞を用いた.培地交換は培養開始2日目から毎日行った.桑実胚を用いた区では体内受精由来胚・体外精由来胚ともに培養開始7日目でES細胞様コロニー形成は全く見られなかった(0/17, 0/26).一方,胚盤胞を用いた区における培養開始7日目のES細胞様コロニー形成率は,体内受精由来胚で16.0%(4/25),体外受精由来胚では17.1%(7/41)であった.以上の結果より上記培養法においてより効率的にES細胞様コロニーを得るには,桑実胚よりも胚盤胞を用いるほうが有効であり,体内受精由来胚と体外受精由来胚とでES細胞様コロニー出現率において有意な差がないことが示された.
  • 人工陰茎による液体の子宮内輸送
    小嶋 佳彦, 川上 静夫, 紫野 正雄, 大地 隆温
    原稿種別: 技術短報
    1996 年 42 巻 5 号 p. j35-j38
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    犬の陰茎は,腟内に挿入後,亀頭球が増大して,coital-lockが形成される.今回,空気を入れると勃起した陰茎と類似した形状となるラテックス製犬人工陰茎を試作し,その機能性を検討した.あらかじめ空気をぬいた人工陰茎を発情犬の腟内に挿入して,注射器でチューブを通して空気を送入し,膨満させた.この人工陰茎は,亀頭球に擬した部分も膨満するので腟外脱出が防止できた.次にこの陰茎の先端に開口している細いチューブを通じて液(造影剤)を注射器で送り込んだ.5分後にX線撮影を行ったが造影剤は両子宮角の全域に進入した.この結果から,この人工陰茎は人工授精に効力を発揮することが示唆された.一方,従来から行われている犬の後部を持ち上げての腟深部授精でも高い受胎率が得られているので,比較検討を行うことが必要である.
  • 小嶋 佳彦, 川上 静夫, 紫野 正雄, 大地 隆温
    原稿種別: 技術短報
    1996 年 42 巻 5 号 p. j39-j41
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    筆者らの考案した人工陰茎を用いると造影剤が容易に発情犬の子宮内に送入されたので,今回は凍結精液を用いるための前駆試験として,発情犬に対して新鮮精液による人工授精を人工陰茎を用いて実施した.その結果,延べ6頭の発情犬すべてが受胎し,分娩した.これらの結果を踏まえて,子宮内に精液を直接注入しないと妊娠が極めて困難とされる凍結精液の場合にも応用できる目途が得られた.
  • 永田 俊一, 近藤 昌弘, 金子 浩之, 荒木 一司, 南保 泰雄, 及川 正明, 渡辺 元, 田谷 一善
    原稿種別: 技術短報
    1996 年 42 巻 5 号 p. j43-j49
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    血中エストラジオール-17β 濃度の低い動物の血中エストラジオール-17β を,測定するための血液の脱脂法を検討し,アセトニトリルを用いてn-ヘキサンと分配することにより,従来から用いられてきたメタノールを使用する方法に比べて,迅速で回収率の高い脱脂方法を確立した.血清(血漿)1 mlから,ジエチルエーテルによる一回抽出法で抽出乾固したステロイド分画に,アセトニトリル0.5 mlとn-ヘキサン1.0 mlを加えて撹拌し,遠心分離してn-ヘキサン層を吸引除去する.次に,再度n-ヘキサン1 mlを加え,撹拌せずにn-ヘキサン層を吸引除去する.もう一度この操作を繰り返して,最後にエバポレーターあるいは窒素ガスでアセトニトリル層を乾固し,ラジオイムノアッセイにてエストラジオール-17β を測定する.この脱脂方法を用いることにより,短時間で血清(血漿)から抗原抗体反応抑制物質を除去することが可能であり,また低濃度の工ストラジオール-17β の回収率および再現性も満足できる結果が得られた.この脱脂方法を利用することにより,エストラジオール-17β 濃度が低い動物においても,安定した測定が可能である.
症例報告
  • 角川 博哉, 仮屋 尭由, 高橋 ひとみ
    原稿種別: 症例報告
    1996 年 42 巻 5 号 p. j51-j54
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    分娩後早期に排卵することなく卵胞嚢腫に移行した高泌乳牛(前産次305日乳量は9149 kg)1例の発症過程とその後の自然治癒過程を,卵巣の動態,末梢血中のホルモン濃度ならびに栄養充足率の推移から調べた.分娩後14日に直径約18 mmの卵胞の発育が認められたが,これは排卵することなく急激に大きくなり最大直径約45 mmとなり,卵胞嚢腫へと移行した.分娩後38日まで黄体は存在せず,末梢血中のプロジェステロン濃度も低値で推移した.分娩後22日までに,乳量の急増とともに約10%の体重の減少と,ボディコンデションスコア(BCS)の急減が観察された.分娩後22日のTDN充足率とCP充足率は63%,142%であった.85%以上のTDN充足率を維持した9日目(分娩後37日)に,明瞭な発情が発現し,翌日,同側卵巣に新たに発育した卵胞が排卵し,初回排卵が観察された.初回排卵後は3回の性周期と正常な形態の黄体の発育退行が観察され,卵胞嚢腫の再発は観察されなかった.分娩後99日の人工授精により受胎し,末梢血中プロジェステロン濃度は高値を維持した.この卵胞は初回排卵後,徐々に縮小した.
1995年度斎藤賞受賞講演論文
  • 砂川 政広
    原稿種別: 1995年度斎藤賞受賞講演論文
    1996 年 42 巻 5 号 p. j55-j62
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/10/20
    ジャーナル フリー
    実用技術の開発 1)低単位量のFSHによる黒毛和種牛の過剰排卵誘起処理:未経産牛には総量10 AU,経産牛には総量13 AUを用いた漸減的投与により実施した.未経産牛では優良胚の生産性(数と率)が向上し,経産牛では,移植可能胚率と優良胚の生産性が対照区に比べ有意に高かった.2)胚保存液への乳清の添加利用: ホルスタイン種初乳乳清を10%(V/V)の割合で保存液(PBIBSA-, BMOC-3BSA-)に添加し、培養と移植試験を実施した.培養試験では供試胚(後期桑実胚,初期胚盤胞)の86.4%が脱出胚盤胞に発育し,移植試験では,新鮮胚で63.2%,分割胚で41.7%の受胎率が得られた.3)胚の切断2分離技術の活用:各ステージの胚盤胞を2分離し、染色体分析材料となる栄養膜半切片と移植胚となる栄養膜半切胚を作製した.染色体分析では、作製した20枚の標本中15枚(75.0%)で性の判別が可能であった.10%エチレングリコールと0.1 Mショ糖で凍結した栄養膜半切胚のダイレクト移植による受胎率は54.5%で,同様に凍結した無処理胚の成績とほぼ同等であった.胚移植技術の普及および啓蒙 1988年度より黒毛和種胚の有償配布事業を開始し、これにより実際的な技術者の養成を図った.事業開始以降5年間の移植受胎率は,新鮮胚が62.2%(405/651),凍結胚が52.2%(635/1,216)であり,これにより県下に胚移植技術の安全性が示された.
1995年度家畜繁殖学会シンポジウム-生殖行動の比較生物学-
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