Journal of Reproduction and Development
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症例報告
分娩後早期に発症し自然治癒した高泌乳牛の卵胞嚢腫の一例
角川 博哉仮屋 尭由高橋 ひとみ
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1996 年 42 巻 5 号 p. j51-j54

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抄録

分娩後早期に排卵することなく卵胞嚢腫に移行した高泌乳牛(前産次305日乳量は9149 kg)1例の発症過程とその後の自然治癒過程を,卵巣の動態,末梢血中のホルモン濃度ならびに栄養充足率の推移から調べた.分娩後14日に直径約18 mmの卵胞の発育が認められたが,これは排卵することなく急激に大きくなり最大直径約45 mmとなり,卵胞嚢腫へと移行した.分娩後38日まで黄体は存在せず,末梢血中のプロジェステロン濃度も低値で推移した.分娩後22日までに,乳量の急増とともに約10%の体重の減少と,ボディコンデションスコア(BCS)の急減が観察された.分娩後22日のTDN充足率とCP充足率は63%,142%であった.85%以上のTDN充足率を維持した9日目(分娩後37日)に,明瞭な発情が発現し,翌日,同側卵巣に新たに発育した卵胞が排卵し,初回排卵が観察された.初回排卵後は3回の性周期と正常な形態の黄体の発育退行が観察され,卵胞嚢腫の再発は観察されなかった.分娩後99日の人工授精により受胎し,末梢血中プロジェステロン濃度は高値を維持した.この卵胞は初回排卵後,徐々に縮小した.

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© 1996 Society for Reproduction and Development

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