家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
鶏の受精率およびふ化率の季節的変化とくに自然交配と人工授精との差異
佐伯 祐弌野上 征利
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1964 年 10 巻 2 号 p. 37-43

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抄録

1960年から1963年までの記録によって,自然交配の場合と人工授精の場合との受精率およびふ化率の季節的変化を調査した。
自然交配の場合の調査鶏種は,白色レグホーン(WL),ニューハンプシャー(NH),横斑ロック(BP)の3純粋種と,WL♂♂×NH♀♀,NH♂♂×WL♀♀,WL♂♂×BP♀♀およびBP♂♂×WL♀♀の4交配種を用いた。
人工授精には主として,白色コーニッシュ(WC♂♂)×(WL♂♂×NH♀♀)(♀♀)および(WC♂♂)×(WL♂♂×BP♀♀)(♀♀)の3元交配種を用いた。
1.自然交配の場合の総入卵数1,932,366個の平均受精率は83.7%であった。また人工授精の場合,用いた327,485個の平均受精率は81.9%であったが,両群間に有意差は認められなかった。
2.受精率の季節別差異において,自然交配群では春季(86.5%),秋季(84.2%),冬季(82.2%)および夏季(81・8%)の順位であった。人工授精群においても受精率の季節的順位は前群と全く同様であったが,春,秋,冬,夏の成績はそれぞれ83.9%,83.1%,81.7%および78.9%であった。
受精率の月別差異において,自然交配群では4月と5月は最高値(86.8%)を示し,8月は最低値(79.1%)であった。人工授精群においては10月に最高受精率(84.8%)を示し,3月(84.0%)および5月(83.9%)も上位で,7月は最低値(77.9%)であった。
3.種類別受精率において,自然交配では,WL×WL(87.3%),WL×BP(84.5%),BP×BP(83.1%),NH×NH(82.8%),NH×WL(82.1%),WLxNH(81.8%)そしてBP×WL(80・6%)の順位であった。
4.自然交配の場合の平均ふ化率は86・8%であったのに対して,人工授精の場合のそれは87.7%であったが,両者間に有意差はみられなかった。
5.自然交配の場合の季節別ふ化率は上位より,春(88.7%),冬(87.5%),夏(85.6%)および秋(85.5%)の順位であった。ところが人工授精における季節別ふ化率は秋(88.5%),春(88.2%),冬(87.3%)および夏(86.9%)の順位であった。
自然交配における月別ふ化率で,3月(89.1%),4月(88.9%)は上位で,9月(83.2%)は最下位であった。これに対して人工授精の場合,最高値は5月(93.3%)で,最低値は1月(82.3%)にみられた。
6.自然交配における種類別ふ化率では,NHxWL(90.6%)が最高位で,.WL×BPは最下位(81.7%)であった。
7.自然交配の平均発育中止率は7・5%であったのに対して,人工授精のそれは9.3%であった。季節別には前者において春(6.2%)が最もよく,夏(8.9%)は最高中止率を示した。後者においては各季節間に大差がなかった。
自然交配のとうた率および死ごもり率の平均は5.7%であったのに対して,人工授精のそれは34%であった。季節別には春季は5.1%で最もよく,秋季は6.7%で最も不良であった。人工授精群においては各季とも4%以下で,季節間に有意差はみられなかった。

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