家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
山羊精液中の卵黄凝固酵素に関する研究
VI.山羊の射出精液ならびに副生殖腺液の化学的性状について
入谷 明西川 義正
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1964 年 10 巻 2 号 p. 44-51

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抄録
山羊精液の化学的性状については報告が少く,いまだ明らかにされていない成分もかなりみられる。この実験では3頭の雄山羊について1~2力年間にわたって採取した精液につき化学的組成を検討し,また5頭の雄山羊の副生殖腺液の性状もしらべた。これによって山羊精液の化学的性状が明らかとなり,また山羊精液には尿道球腺から分泌される特有の卵黄凝固酵素を含むので,これに関連した成分上の特性の有無をあわせて検討した。主なる結果はつぎのごとくであった。
1.山羊の射出精液のpHは濾紙法で測定して6.5(B.T.B.)であった。また精液量は0.63m1(0.1~1.8ml),精子濃度は37.5×108/ml(16~62×108/ml)であった。なお精液量は繁殖季節に多く,精子濃度はむしろ非繁殖季節に高い傾向がみられた。
2.山羊精漿中の全窒素は牛,緬羊のそれらと大差はなかったが,非蛋白窒素(トリクロール酷酸溶性)はかなり多く,牛,緬羊の約4倍,豚の約10倍程度であった。また精漿中の果糖,クエン酸はそれぞれ707.7mg/dl,384.0mg/d1であって,これらの成分は蛋白濃度とともに年間変異を示し,繁殖季節に高くなる傾向がみられた。
3.精液中の燐酸化合物は,精漿中には酸溶性燐が多く核酸燐はきわめて少なかった。また無機塩類のうちK,Clが緬羊のそれらよりも幾分高いようであるが,Ca,Na,Mgの濃度では大差はなかった。
4.山羊副生殖腺液の性状は,尿道球腺液のpHは精のう,前立腺に比べ高く,電極法で8.3であった。全窒素はいずれの腺においても精漿中の濃度よりも高く,非蛋白窒素は尿道球腺にとくに多いようであった。果糖,クエン酸は精のう液中に圧倒的に多く,他の2者ではきわめて少なかった。燐酸化合物のうち全量と酸溶性燐の濃度は精漿中の濃度よりもむしろ少なかった。Ca,Kは尿道球腺液に多く,Mgは精のう液中に高濃度に含まれていた。
5.以上によって山羊精液の一般性状ならびに化学的性状につきある程度の知見がえられたが,本実験の範囲内では牛や緬羊の精液と比べてとくに凝固酵素の存在に関連すると思われるような特異的成分はみとめられなかった。
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© 日本繁殖生物学会
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