家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
過排卵ラット卵子の形態的研究
III.成熟ラットの受精と着床について
石橋 功田中 宏高橋 紀代志
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1970 年 16 巻 1 号 p. 14-19

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抄録

人工昼夜の条件下で飼育した成熟ラット433匹に性腺刺激ホルモンを投与して過排卵を誘起し,卵子の生活能力保有時間,受精および着床について検討を行なった。
1. PMS30I.U.+HCG50I.U.の投与により過排卵を誘起した卵子の生活力保有時間を,第2極体が形成されるか否かによってしらべた。排卵後12(HCG注射後24時間),15(27),18(30),21(33),24(36)時間に冷刺激を与えた場合,第2極体を形成した卵子の比率は,それぞれ94.2,94.0,86.8,60.2,33.7%であった。このことから,過排卵ラット卵子は無処置の卵子とほぼ等しい時間生活力を保有しつづけるものと考えられる。
2. HCG25 I.U.,PMS30I.U+HCG50I.U..,PMS50I.U.+HCG50I.U.を投与して交配し,6時間後における精子侵入率は75.8(257/337),49.4(496/1005),47.2%(727/1541卵子)であった。精子頭部が卵原形質内にあったものは,それぞれ54.0,28.0,24.6%であり,第2極体を形成している卵子の割合は精子侵入卵子の44.0,28.4,27.8%であった。この結果を無処置の場合の精子侵入率68.8%(220/320卵子),精子頭部が卵原形質内にあるもの39.4%,第2極体を形成している卵子は精子侵入卵子の38.2%であるのに比較すれば,過排卵ラット卵子の受精は,その進行において僅かに遅滞しているように見える。しかしながら,過排卵ラット卵子の排卵完了時間は若干時間遅れ,かつ本結果は6時間後の観察であるので,この成績でもって受精率が低いとはいえない。
3. HCG25I.U.,HCG50I.U.,PMS10I.U.+HCG25I.U.,PMS10I.U.+HCG50I.U.,PMS30I.U.+HCG50I.U.の処置を行なって交配し,9日後における妊娠ラヅトの割合は,84.0(42/50),52.0(26/50),72.0(36/50),60.0(30/50),0%(0/40匹)であり,平均着床数は,11.6(7~17),12.2(10~16),12.3(8~16),11.5(7~16)個であった。無処置の場合の妊娠率は95.2%(40/42匹),着床数は11.8(7~16)個であるので,処置ラットの妊娠率は低く,着床数では差がない。しかしながら,PMSを前処置した場合は排卵数が多いので,排卵数に対する着床数の割合は低いことが推測される。
4. 着床部の大きさは,無処置が平均5.62mmであるのに対し,処置ラットの場合は5.06~5.31mmでやや小さいようにみえるが,ホルモン処置の影響であるか否かは明らかでない。

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