家畜繁殖研究會誌
Print ISSN : 0453-0551
過排卵ラット卵子の形態的研究
IV.成熟ラットの着床ならびに胞胚期におよぼす性腺刺激ホルモンの影響
石橋 功
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1972 年 18 巻 3 号 p. 87-93

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抄録

成熟ラット590匹を使用して,性腺刺激ホルモンの着床ならびに胞胚期におよぼす影響を検討した。また成熟ラット90匹および未成熟ラット185匹を用いて,溶解後保存したホルモンの効力を,排卵ならびに過排卵を誘起することによってしらべた。
1.HCG 25および50I. U.を投与して交配し,9日後における着床は,4.2(4/95)および0%(0/60匹)のラットにみられ,無処置の90.6%(58/64匹)に比較して低かった。
2.HCG 5,10,25,50I. U.およびPMS 20I. U.+HCG 10I. U.を投与後交配し,96~97時間における胞胚期卵子をもったラットの割合は,それぞれ66.7(18/27),25.6(20/78),3.3(2/61),0(0/50)および15.1%(8/53匹)であり,平均着床数は,9.9,6.3,9.5,0および4.6個であった。これに対し,無処置は100%(30/30匹)のラットが,平均10.2個の胞胚期卵子をもった。
3.以上の結果から,性腺刺激ホルモンの投与が,成熟ラットの着床ならびに胞胚期に対し,種々の程度に悪影響を与えるものと考えられる。また上記の結果は,さきの報告(1970)25)の着床の成績と相当異なるものであるが,その原因を適確に知ることは出来なかった。しかしながら,今回の結果の妥当性からみて,恐らくはさきの報告に実験上の過失,特にホルモンの取扱いを主とした失宜があったのではないかと推測される。
4.成熟および未成熟ラットの排卵ならびに過排卵を誘起することによって,溶解して0~28日間保存したPMSおよびHCGの効力を検したところ,種々の投与量において保存日数別に,著しい差違はなかった。

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