抄録
乳房炎,アルコール不安定乳などの異常乳発生機序の基礎的研究の一つとして,estradiol monobenzoateあるいは菌接種によるラットの実験的乳腺炎におけるリゾチーム,グルコサミンなどの変動とウシ乳房炎起因菌のリゾチームに対するin vitro の抵抗性を検討し,次のような成績を得た。
1)泌乳14日目のラットにEB10μ9を3~8回皮下注射し,第1回注射後5,8,24及び48時間目の乳腺組織内成分の変動をみたところ,リゾチームは時間の経過とともに漸増し,24時間で最高を示し,グルコサミンもおおむねこれに平行した。
2)同様の実験で第1回のEB注射後2時間目にブドウ球菌あるいはレソサ球菌を乳頭口から注入し,同様の経過時間で乳腺組織内成分の変動を観察した。EB+ブドウ球菌接種群,レソサ球菌接種群ともに時間の経過につれてリゾチーム,グルコサミソは増加し,24時間で最高を示した。また対照の菌のみ接種群,前記のEBのみ投与群よりもやや高値を示した。
3)6株のウシ乳房炎起因菌の培養液1mlに5.0~250μg/mlの範囲で濃度を変えたリゾチームをそれぞれ添加し,一定感作後これらを培養して菌の発育状態を分光光度計で比濁した。Escherichia coliはリゾチームの濃度差によって,リゾチーム無添加培養液に比し,6~30%の発育抑制を示し,同様にStreptococcus bovisは16~62%,Staphylococcus aureus黄色コロニー株は8~46%,同じく白色コロニー株は23~57%の発育抑制を示したが,Streptococcus fecalisは一定の傾向を示さず,抑制率も10~20%であった。
