抄録
子宮への好酸球の浸潤に対する肥満細胞の関与を調べるために,肥満細胞欠損(W/Wv)マウスを用いた.卵巣除去後に7用量(0.001-0.25μg/g体重)のエストラジオールー17β(E2)を2回投与し,24時間後の子宮重量と子宮の好酸球数を組織切片上で算定した.子宮の好酸球はvehicle投与の対照群には認められなかった.子宮重量と好酸球数は投与E2量に応じて増加したが,0.05μg(/g体重)以上ではE2投与群間に有意の差は認められなかった.子宮の部位(反間膜部,間膜部,側面部)による好酸球数には差異はなかった.また,E2投与後の時間経過に伴う子宮重量と好酸球数の変化では,重量は24から48時間後まで一定であったが,好酸球数は増加し続けた.子宮内のヒスタミン含量を0.15μg(/g体重)E2を2回投与後,24時間で測定した.ヒスタミン含量はvehicle投与対照群より有意に多かったが,子宮重量当たりの濃度では差は認められなかった.以上のことから,E2投与後の好酸球の子宮浸潤は肥満細胞欠損(W/Wv)マウスにおいても示されたので,好酸球浸潤における肥満細胞の関与はないことが示唆された.