日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-68
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卵・受精
ブタCdk活性化キナーゼ(CAK)のクローニングおよび卵成熟過程における関与
*藤井 渉山室 匡史嶋岡 琢磨西村 鷹則加納 聖内藤 邦彦
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抄録

【目的】MPF活性はCdc2タンパク質のリン酸化修飾によって変動し、161番スレオニン(T161)のリン酸化がMPFを活性化する。一般にCdc2の T161はCdk7、Cyclin H、MAT1からなるCdk活性化キナーゼ(CAK)によってリン酸化されることが知られている。哺乳類において、体細胞分裂ではCAK活性は細胞周期を通して恒常的に高いレベルを維持しているとされているが、卵成熟におけるT161リン酸化状態の変化やその制御については明らかではない。そこで、哺乳類卵成熟過程のMPF活性変動に対するCAKによる制御の詳細を明らかにすることを目指し、本研究では、ブタのCAKをクローニングし卵成熟過程における関与について検討した。【方法】屠場由来ブタ卵巣より未成熟卵を回収し、体外成熟培養を行った。Western Blot法によって成熟過程におけるCdc2のT161リン酸化状態を調べた。ブタのCAKを構成するCdk7、Cyclin H、MAT1の遺伝子をクローニングするために、ヒト、マウスcDNA配列を元にブタESTを検索し、GV期卵のmRNAを鋳型としたRT-PCRを行った。得られたPCR産物の配列を決定し他種と比較した。Cdk7のアンチセンス(as)RNAをGV期卵の細胞質内に顕微注入し、核成熟およびCdc2 T161リン酸化状態について調べた。【結果】卵成熟過程にけるCdc2のT161リン酸化は、GV期卵では極めて低く24、48時間に高かった。ブタ卵において、ヒト、マウスと94%以上の高い相同性を示すCdk7、Cyclin H、MAT1が存在した。卵成熟過程を通してこれらの転写産物が存在することが明らかとなり、ブタ卵成熟過程においてCAKとして機能していることが予想された。Cdk7に対するasRNAを注入したところ、成熟培養48時間において、Cdc2の T161リン酸化はわずかに低下し、成熟率が低下した。以上の結果から、ブタ卵成熟過程において、CAKがCdc2のT161リン酸化を介して卵成熟へ関与している可能性が示唆された。

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© 2009 日本繁殖生物学会
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