日本繁殖生物学会 講演要旨集
第102回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-7
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卵・受精
マウス卵成熟進行におけるAkt/protein kinase Bの役割
*佐藤 優介星野 由美坂井 知津香佐藤 英明
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抄録
【目的】我々はこれまでに、Akt/protein kinase Bがマウスの卵成熟過程で特異的に発現し、減数分裂の完了に関与していることを報告した。AktはGV期からMII期にかけて一定レベルで発現し、局在のみが変化するタンパク質であるが、減数分裂再開における役割は明らかでない。本研究では、GV期からMI期への進行におけるAktの役割について解析した。【方法】3週齢のICR雌マウスにPMSGを腹腔内投与し、48時間後に卵巣より卵丘細胞-卵子複合体を採取した。体外培養は、FSHおよびhypoxanthineを含むWaymouth’s MB培地にAkt活性阻害剤であるAkt inhibitor X(Calbiochem)を0、2.5、5および10µM添加して行った。減数分裂再開時のAkt活性と阻害剤の影響は、培養0~7時間で観察した。活性阻害による影響は、核相の進行とその後の体外受精・体外発生(IVFC)で評価した。Aktの発現は免疫蛍光染色法とウエスタンブロット法により解析した。さらに、Aktと微小管との関係を調べるため、免疫沈降法により解析した。【結果】Akt活性はGVBDの出現に伴って低下した。Akt阻害剤添加区では、濃度依存的にGVBDおよびMI期への進行が早まったが、培養18時間後の成熟率に差は見られなかった。MII期に到達した卵子をIVFCに供したところ、阻害剤添加区において受精後の発生率が低かった。さらにAktは紡錘体上に局在し、MI期においてはα-tubulinと結合していた。【考察】本研究の結果、Aktは紡錘体の形成・維持に関与する可能性が示された。さらに、活性阻害により核相の進行が早まったことから、AktはGV期からGVBD、さらにMI期への核相の移行期間を引き伸ばし、核成熟の進行を調整する役割を持つことが示された。核相の進行に要する時間は、受精後の胚発生に重要であり、Aktは核と細胞質の成熟に積極的に関与している可能性がある。
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© 2009 日本繁殖生物学会
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