日本繁殖生物学会 講演要旨集
第103回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-27
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内分泌
雄ヤギとSalsolinolによるプロラクチン分泌反応
*澤田 建中嶋 侑佳八重樫 朋祥斉藤 隼人後藤 由希金 金澤井 健橋爪 力
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抄録
【目的】我々は,ドーパミンの誘導体,Salsolinol (SAL)は成熟雌ヤギや雌ウシのプロラクチン(PRL)を放出させることを報告している。本研究は、雌性動物と生殖生理が著しく異なる雄ヤギを用いて,SALによるPRL分泌反応を明らかにしようとした。本研究では雄子ヤギと成熟雄ヤギの差や季節による反応差を明らかにすると共に,ドーパミン拮抗薬,ドーパミン作動薬,ドーパミン前駆物質を投与してSALによるPRL分泌機構を探る実験も行った。
【方法】(1) 雄子ヤギ(3ヵ月齢)と成熟雄ヤギ(2歳)を用い,6月と10月に頸静脈内にSAL(5 mg/kg b.w.)とスルピリド(ドーパミン拮抗薬:0.1 mg/kg b.w.)を投与して血中PRL濃度の変化を調べた。(2) 成熟雄ヤギをブロモクリプチン(ドーパミン作動薬: 0.1 mg/kg b.w.)で前処置(3回筋注)し,頸静脈内にSALを投与して血中PRL濃度の変化を調べた。(3) 雄子ヤギをL-ドーパ(ドーパミン前駆物質:1 mg/kg b.w.)で前処置(1回静注)し,頸静脈内にSALを投与して血中PRL濃度の変化を調べた。採血はSAL投与後頸静脈カテーテルから経時的に2時間行った。
【結果】(1) 雄子ヤギと成熟雄ヤギともSALとスルピリドによるPRL放出反応は10月より6月の方が高かった(P<0.05)。またPRL放出反応は6月では雄子ヤギと成熟雄ヤギで差は見られなかったが,10月においては成熟雄ヤギの方が雄子ヤギより高かった(P<0.05)。SALとスルピリドによる反応差は6月では見られなかったが,10月ではSALに比べスルピリドの方が高くなった(P<0.05)。(2) ブロモクリプチンで前処置すると,SALによるPRL放出反応は抑制された(P<0.05)。(3) L-ドーパで前処置すると,SALによるPRL放出反応は抑制されたが(P<0.05),スルピリドによる反応は抑制されなかった。
 本研究の結果は,SALは雄ヤギでもPRLを放出させること,またSALによるPL放出反応はドーパミンと深く関わっていることを示す。
 本研究は科学研究費補助金(21380169)で行われた。
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© 2010 日本繁殖生物学会
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