抄録
【目的】哺乳類精子には種々のRNAが含まれ、精子内RNAは精子機能や雄の妊性に関与している報告がある。しかし、特定遺伝子(mRNA)の発現と精子機能との関連を検討した報告はあるが、精子内RNA量と精子機能の関連については明らかでない。そこで本研究では、ブタ精液採取時に従来の精液評価とともに精子(精液)内RNA量を測定し、精液評価パラメータと精子内RNA量間の相関の有無について検討した。
【方法】2010年10月18日から12月27日に、岡山県畜産研究所の種雄豚(デュロック種)を用いて週1回採精を行い、精液量、精子濃度、総精子数、精液pH、精子活力、RNA量を測定した。各項目の測定は、精子数は血球計数装置、pHはpH試験紙、活力は精液性状検査板、RNA量はQuant-iT RNA BR Assay Kitを用いた。なお、RNA量に関しては、精液原液およびTL-HEPES-PVA液で洗浄後の精子浮遊液を測定した。
【結果】8頭の雄個体から合計44回採精を行い、RNA量と他のマラメータについて相関の有無を調べた。その結果、精子活力と108精子当たりのRNA量の間に正の相関がみられ、洗浄前の相関はR=0.58(p<0.05)、洗浄後の相関はR=0.52(p<0.05)であった。一方、総精子数と108精子数当たりのRNA量の間に負の相関がみられ、洗浄前の相関はR=-0.58(p<0.05)、洗浄後の相関はR=-0.52(p<0.05)であった。また、洗浄前のRNA量と洗浄後のRNA量には正の相関(R=0.65, p<0.05)がみられた。
【結語】 以上の結果から、豚精液評価の指標として精子内RNA量の適用の可能性が示された。