日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-11
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卵・受精
ブタ後期胚培養用培地へのKSR添加が体外生産胚盤胞の孵化に及ぼす影響
*櫻井 優広野口 倫子鈴木 千恵吉岡 耕治
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抄録

【目的】近年,ブタ胚の体外生産技術が改善され,当研究室でも体外生産胚盤胞の移植による産子作出に成功している。しかし体外生産胚では,胚盤胞が透明帯から孵化できずに着床率が低下することなどが知られており,より安定した胚の体外生産技術の確立が求められている。これまでに我々は,ブタ胚の発生培地に10%ウシ胎子血清(FBS)を添加することで,胚盤胞への発生率および孵化率が向上することを報告した。しかし,FBSには未知因子が多く含まれ,ロット差も大きいため,より安定した成績が得られる無血清培地の開発が必要である。そこで,本研究ではブタ胚の体外生産技術の改善を目的に,血清代替物であるknockout serum replacement (KSR) を添加することで,胚盤胞の孵化率の向上を試みた。【方法】食肉処理場由来の卵巣から採取し,卵子成熟用培地(POM)で44時間成熟培養した卵子は,パーコール分離した凍結融解精子と体外受精を行った。媒精後10時間目に卵丘細胞を除去した体外受精胚は,培養胚発生用培地(PZM-5)で5日間培養した。媒精後5日目(Day 5)に得られた胚盤胞は,0%, 1%, 2%, 5%, 10% KSRあるいは10% FBSを添加した後期胚培養用培地(PBM)で継続培養し,Day 6およびDay 7に胚盤胞の生存率および孵化率を,Day 7に総細胞数を計測した。また,0%および5% KSR添加区はDay 6に内部細胞塊(ICM)および栄養膜外胚葉(TE)の細胞数を計測した。【結果】Day 7に完全に孵化した胚盤胞の割合は,5% KSR添加区で有意に最も高く(0% KSR: 8.9±2.2%, 5% KSR: 51.6±6.2%, FBS: 35.4±8.4%),5% KSR添加区の完全に孵化した胚盤胞の総細胞数(135.6±6.3個)は,FBS添加区(102.6±6.4個)に比べ有意に多かった。また,5% KSR添加区のDay 6胚盤胞では,TE細胞数が無添加区に比べ有意に増加したが(0%: 52.2±3.7個, 5%: 63.4±3.0個),ICM細胞数は差を認めなかった(0%: 12.0±0.9個, 5%: 11.6±0.9個)。以上,PBMへの5% KSR添加により,ブタ胚盤胞のTE細胞数が増加し,孵化が促進されることが示された。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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