日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-10
会議情報

卵・受精
ブタ卵成熟過程におけるMusashiの機能解析
*安藤 萌杉浦 幸二内藤 邦彦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】卵の減数分裂が正常に進行するためには、卵内に蓄積されたmRNAが適切な時期に翻訳される必要がある。減数分裂過程においては、RNA結合タンパク質のCPEBを中心とした翻訳制御機構が主として働いているとされているが、近年アフリカツメガエルの卵ではMusashi(Msi)というタンパク質がMos mRNAに結合し、翻訳を活性化することで減数分裂の再開に関与することが明らかになった。しかし現在のところ哺乳類卵におけるMsiの機能を示した報告はない。そこで本研究は哺乳類卵においてMsiが減数分裂進行の制御に関与しているか明らかにすることを目的とし、ブタ卵を材料に実験を行った。【方法】はじめにブタMsi(以下pMsi)遺伝子の単離を試みた。脊椎動物のMsiには1と2の2種類が存在し、どちらもマウスやヒトで報告されているため、それらの配列に基づくプライマーを設計し、RT-PCRにより完全長cDNAを得た。次に、in vitroで合成したpMsi1、pMsi2のmRNA及びアンチセンスRNA(asRNA)をブタ卵に顕微注入して過剰発現及び発現抑制を行い、減数分裂過程におけるpMsiの必要性を検討した。【結果】RT-PCRにより他種の相同タンパク質と高い相同性を示すpMsi1とpMsi2が得られた。また両者のmRNAは減数分裂過程を通してブタ卵に存在した。ブタ未成熟卵にpMsi1を単独で過剰発現させたところ、培養18時間において対照と比べ有意に減数分裂の再開が促進され核膜崩壊率は対照の22.8%に対し52.3%であった。次にasRNAの注入によりpMsi1のみ合成を阻害した結果、減数分裂の進行に影響は見られなかった。そこでpMsi1とpMsi2の両者を同時に発現抑制したところ、対照と比較して減数分裂の進行に有意な遅れが見られ、対照卵の減数分裂再開が進行中の核膜崩壊率62.5%の時点で、pMsi抑制卵の核膜崩壊率は37.0%であった。以上より、pMsiが減数分裂の正常な進行に必要であることが示唆された。

著者関連情報
© 2012 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top