日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-33
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生殖工学
複数のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を同時に用いたクローンマウス作成方法
*李 羽中寺下 愉加里野老 美紀子若山 照彦
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抄録

【目的】近年,TSAなどのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)をクローン胚に処理することで,クローンマウスの作成率を大きく改善することが可能となった。しかし,HDACは18種類が見つかっており,各種のHDACiはそれぞれ特定のHDACを阻害するだけである。もし複数のHDACiを核移植後に添加することによってより多くのHDACを阻害すれば,クローンマウスの作出成績をさらに改善できるかもしれない。本研究では,数種類のHDACiを同時に培地に添加することでクローンマウスの作成効率の改善を試みた。【方法】マウス胚移植後,活性化培地に4種類のHDACi(TSA,Scriptaid,SAHA,Oxamflatin)を混合したもの(実験区A:それぞれのHDACiは発表されたのと同じ濃度;実験区B:1/4濃度;実験区C:1/10濃度 )を添加し,従来法と同じ9時間の処理した後培養し,胚盤胞までの体外発生率と産仔率を調べた。次にHDACisの濃度を6時間後に変更し,翌日(合計20時間)まで処理したクローン胚の体外発生率,産仔率,ntES樹立率を調べた。【結果】4種類のHDACi混合液を用いると,どの濃度の実験区でも9時間処理によって未処理区より有意に胚盤胞への発生率を改善出来た。胚移植後,実験区A,B,Cそれぞれから4.4%,7.1%および8.3%の成功率でクローンマウスが生まれてきた。一方,連続20時間HDACi混合液で処理を行った場合,二細胞期でのヒストンアセチル化が9時間処理より促進され,特に実験区BではTSA単独処理よりクローン産仔率が倍以上改善された(実験区B:8.8%,TSA:4.0%)。ntESの樹立率も78%まで上昇した。【考察】今回の研究結果から,複数のHDACiを最適濃度で用いれば,長時間HDACi処理してもクローンマウスの作成効率を低下させないことが明らかとなった。従来のHDACi 9時間処理法と比べ深夜の培地交換が必要なく,研究者にとってより簡便な体細胞核移植法となるだろう。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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