日本繁殖生物学会 講演要旨集
第105回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-34
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生殖工学
脱イオン化ウシ血清アルブミンのマウス体細胞核移植胚への注入は,その胚盤胞期への発生およびヒストンアセチル化を促進する
*伊佐治 優希田島 陽介今井 裕山田 雅保
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抄録

【目的】マウス体細胞核移植(SCNT)において、細胞融合法で作出した再構築卵の細胞質にd-BSAを顕微注入すると、そのSCNT胚の胚盤胞期への発生が促進され、胚盤胞の内部細胞塊数が増加することを我々は明らかにしている。本研究では,SCNT胚の発生およびヒストンアセチル化レベルに及ぼすd-BSAの卵細胞質内顕微注入およびその注入時期の影響について検討した。【方法】B6D2F1系雌マウスの卵丘細胞をドナーとし,細胞融合法によってSCNT胚を作出した。活性化開始前もしくは6時間後において,6% FITC-BSAもしくはd-BSA (0, 6%)を卵細胞質に顕微注入した。FITC-BSAを注入した胚では,活性化開始6.5時間後でのFITCの蛍光を観察しBSAの局在を調べた。d-BSAを顕微注入した胚では,胚盤胞期への発生率,そして,前核期と2細胞期におけるヒストンH3K9およびH4K12のアセチル化レベルを免疫蛍光染色法で調べた。【結果】活性化開始前に6%d-BSAを顕微注入することによって,胚盤胞期への発生率が0%d-BSA注入(コントロール)と比較し有意に上昇した(65% vs. 35%, P<0.05)が,活性化開始6時間後にd-BSAを注入しても有意な差は無かった(42% vs. 36%)。また,注入時期に関わらず,細胞質だけではなく前核内にもFITC-BSAの局在が観察された。さらに,SCNT胚の前核期と2細胞期におけるH3K9およびH4K12のアセチル化レベルは,活性化開始前のd-BSAの顕微注入によってコントロールと比較し増加した。活性化開始6時間後に注入した場合には,それらはコントロールと差は無かった。以上より,SCNT胚の細胞質にd-BSAを注入すると,ヒストンアセチル化レベルの上昇と胚盤胞期への発生の促進が誘起されること,さらにこの効果は,d-BSAが活性化開始から前核形成までの間に作用することによって発揮されることが明らかとなった。

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© 2012 日本繁殖生物学会
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