日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-73
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卵・受精
ブタ卵巣の保存が卵子のSIRT1およびPARKINの発現に及ぼす影響
*佐藤 大地木下 尚也羽場 久美子向田 幸司村山 智紀鵜沢 美穂鈴木 由紀子サントス エリッサ キャロライン門司 恭典桑山 岳人岩田 尚孝
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抄録

【目的】卵子内部のミトコンドリア(Mt)DNAコピー数は卵子の発育や核成熟中にも大きく変化するが,どのような要因がこの変化に関わっているのかは不明である。我々は同一個体より採取した卵子を一定数用いることで,MtDNAコピー数に培養条件が及ぼす影響が検討できることや,卵巣の保存が卵子のMtDNAコピー数に大きく影響することを本年度の卵子学会にて示している。本研究では,卵巣の虚血保存によって卵子中のSIRT1の活性がどのように変化するのか,SIRT1の発現量とMtDNAコピー数の間にはどのような関係があるのか,そして卵巣の保存が卵子中のPARKINの発現にどのような影響を与えるのかについて検討した。【方法】ブタ卵巣を食肉センターより1時間以内に持ち帰り,卵巣表面の一部の卵胞から卵子を回収後,同卵巣をPBS(-)中にて37℃で1時間さらに保存し,再度卵子を回収した。得られた保存前と保存後の卵子を用いてSIRT1の発現量を免疫染色にて比較した。この結果卵巣の保存は,有意に卵子中のSIRTの発現量を増やすことが明らかになった。次に卵巣を実験室に持ち帰った直後に,全ての卵胞から卵子を回収し,同一個体から回収した卵子を2グループに分け,一方をSIRT1の発現量の観察のため免疫染色を行い,残りの卵子はリアルタイムPCR法にてMtDNAコピー数を測定し,両者の間の相関を求めた。合計24頭の豚を用いて実験を行ったところ,MtDNAコピー数とSIRT1の発現量の間に正の相関が認められた(0.41,P<0.05)。さらに保存した卵巣から回収した卵子ではPARKINの発現量が増えることや特徴的な局在が確認できた。そこで同様に同一卵巣から回収した卵子を2群に分け一方をCCCPで2時間処理した。CCCP処理は卵子中のATP含量を有意に減少させ,さらに保存卵子で見られた特徴的な局在も確認できた。本実験より,卵巣の保存はSIRT1を活性化すること,卵子内タンパク質の品質管理機構が活性化している可能性が示された。本研究はJSPS科研費 25450400の助成を受けたものです。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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