日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-93
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生殖工学
フォルスコリンの2i培地への添加はラットES細胞株の樹立に有効か?
*平林 真澄田村 千尋後藤 哲平三宝 誠保地 眞一
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抄録

【目的】MEK阻害剤とGSK3阻害剤を含む2i培地でラット胚盤胞を培養すれば,ES細胞株を樹立することができる。数報の公表論文に基づく限りラットES細胞株の樹立にとってLIFは必須ではなさそうだが,ヒトやブタではフォルスコリンの添加によりコロニーがNaïveになるという。本実験ではフォルスコリンの2i培地への添加がラットES細胞株の樹立に関わるいくつかの指標にどう影響するか,検討した。 【方法】2i培地 (1 μM PD0325901+3 μM CHIR99021) への10 μM フォルスコリン (F) と1,000 U/ml ラットLIF (L) のそれぞれの添加の有無により,計4実験区 ([-][-]区,[-][L]区,[F][-]区,[F][L]区) を設定した。(1) BLKラット胚盤胞のOutgrowth,(2) 継代5代目までの維持,(3) WIラット胚盤胞への顕微注入によるキメラ個体の作製効率,(4) 生殖系列への寄与,の各指標について比較した。 【結果】(1) Outgrowth率は,[-][-]区,[-][L]区,[F][-]区,[F][L]区でそれぞれ,62,88,90,100%となり,F and/or Lの添加区で高かった。(2) P5までの継代維持率は81,87,100,100%だった。(3) 産仔当たりのキメラ誕生率は,44,61,57,71%だったが,注入胚当たりでは25,39,28,14%となり,[F][L]区で真逆の傾向となった。(4) 生殖系列への寄与率,すなわち有色毛のG1産仔例を生じたキメラの割合は,53,55,23,63%だった。結論として,フォルスコリンはラットES細胞株の樹立に有効だが必須ではなく,キメラ作製や生殖系列寄与の効率には影響しなかった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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