日本繁殖生物学会 講演要旨集
第106回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-96
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生殖工学
最少精子数を用いた微小環境マウス体外受精法の確立
*長谷川 歩未持田 慶司小倉 淳郎
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抄録

【目的】微小滴内で体外受精を行うことで,最少精子数でも効果的に受精卵を獲得する手法を考案した。一般的なマウス体外受精には数万~数十万の精子数が必要となることから,精子形成異常のマウス系統や凍結された精子など,十分な精子数を確保できない場合に有効であると考えられる。【材料と方法】動物:C57BL/6JおよびC57BL/6N系統の,それぞれ12週齢以上の成熟雄および5または10週齢の雌を用いた。過排卵処置:雌マウスにPMSG(7.5IU/匹)を腹腔内投与し,48時間後にhCG(7.5IU/匹)を投与,約17時間後に採卵して体外受精に用いた。精子凍結:18%ラフィノース+3%スキムミルク水溶液に精巣上体尾部精子を拡散後,ストローへ封入して液体窒素の気相で凍結した。融解は37℃温浴で行い,15分後に回収した。体外受精:採取した卵子はHTFまたは1.5 mM還元型グルタチオン(GSH)添加HTFで約1時間培養後,各1 μℓの微小滴にキャピラリーを用いて卵子1,3,5,10個を移した。精子前培養はHTFおよび0.4 mM methyl-β-cyclodextrin を添加したPVA-HTFで30分~1時間行い,各微小滴にキャピラリー(内径100 μm)を用いて前進運動性を示す5,10,20,50精子をカウントしながら導入した。4~6時間後にグルコース添加CZBに卵子を移し,培養試験に供した。 【結果】受精用培養液へのGSH添加が受精率を改善し,卵子1または3個に対して5精子を導入した場合でも受精した。新鮮精子では卵子数1~5個の場合,20精子以上導入することで両系統とも60%以上,凍結精子でもC57BL/6JとC57BL/6N系統でそれぞれ60%および78%までの受精率が得られた。更に通常の方法で約30%と低率を示した凍結精子からも,微小環境で同等の受精率を得ることができた。本実験から,微小環境で体外受精を行うことで,通常の体外受精に必要な1/1000以下の精子量で受精卵の獲得が可能となった。

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© 2013 日本繁殖生物学会
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