日本繁殖生物学会 講演要旨集
第111回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR1-26
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生殖工学
ヒト・ラット,マウス卵子のDNAメチローム比較解析
*小林 久人AMOUR Julie Brind’ALBERT Julien Richard白根 健次郎坂下 陽彦神尾 明日香KARIMI Mohammad MLEFEBVRE Louis河野 友宏LORINCZ Matthew C
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抄録

哺乳類特有の遺伝子制御機構である“ゲノム刷り込み機構”において,刷り込み遺伝子の多くは卵子形成過程で確立するDNAメチル化により片アレル性発現の制御を受けている。ヒト・マウス卵子の全ゲノムDNAメチローム解析により,哺乳動物卵子では遺伝子転写ユニット全体が高度にメチル化される特徴的なメチル化パターンを有することが明らかにされた。またマウス卵子ではLTR型レトロトランスポゾンを介する転写ユニット(LTRキメラ型転写物)が数多く同定されている。LTRキメラ型転写物が卵子DNAメチロームの多様性に関与する可能性を検証するため,マウス,ラット,ヒトの卵子DNAメチローム,トランスクリプトームマップを比較解析した。卵子で発現するLTRキメラ型転写物の多くは系統特異的かつ活性型のLTR型レトロトランスポゾン(ERV1,MaLRなど)から転写が開始しており,それらの領域的多様性はCpGアイランド含む多くのメチル化領域の種間差と関与することが明らかとなった。特に齧歯類特異的反復配列MT(Mouse Transcript)キメラ型転写物はマウス,ラットのCpGアイランドメチル化確立に強く貢献していることが示唆された。また,雌核発生胚のDNAメチローム解析により,LTRキメラ型転写物に誘導された卵子由来メチル化の多くは,少なくとも胚盤胞期胚まで維持されることが示された。本発表では,種間ゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム比較によりレトロトランスポゾンが卵子DNAメチローム種間差に与える影響を検証しつつ,これらの種間差が種特異的ゲノム刷り込み機構獲得とどのように関与したかについて議論する。

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© 2018 日本繁殖生物学会
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