日本繁殖生物学会 講演要旨集
第112回日本繁殖生物学会大会
セッションID: OR2-4
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性周期・妊娠
子宮特異的な白血病阻止因子受容体(Lifr)欠損マウスは,エストロジェン応答性の減弱を介した胚着床不全を呈する
*松尾 和裕並木 貴文大友 茉奈影山 敦子伊藤 潤哉柏崎 直巳
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抄録

【目的】マウスの胚着床は交尾確認日を妊娠1日目とすると,妊娠4日目から5日目の間でエストロジェンが上昇することで起きる。エストロジェンはエストロジェン受容体(ERa)を介して子宮上皮からの白血病阻止因子(LIF)を分泌させる。これまでの研究でLIF遺伝子欠損マウスでは胚着床不全を示すことから,LIFシグナルが胚着床には必須であると考えられるが,そのメカニズムは不明である。本研究ではLIFの受容体であるLIFRに着目し,子宮特異的LIFR遺伝子欠損マウスの着床におけるLIFシグナルの役割を調べた。【方法】子宮特異的LIFR遺伝子(PgrCre/+Lifr flox/flox: Lifr d/d)雌マウスを作製し,雄マウスと交配させ妊孕性を産子で確認した。対照区マウスはLifr f/f (Lifr flox/flox)とした。また,妊娠5日目のそれぞれのマウスで胚着床部位の有無を確認した。さらにこれら子宮でのERa,Ki67およびStat3のリン酸化の検出を行った。【結果】Lifr f/fマウスからは平均7.3匹/litterの産子が得られたが,Lifrd/dマウスから産子は得られなかった。妊娠5日目においてLifr f/fマウスは平均7.4個の胚着床部位が確認されたが,Lifr d/dマウスでは胚着床部位は全く認められず,子宮灌流により胚盤胞が回収された。さらに妊娠4日目のLifr d/dマウスの子宮では,ERaの発現は上皮・間質細胞ともに著しく減少していた。またKi67陽性細胞は上皮では増加していたが,間質では減少していた。さらにリン酸化Stat3の発現も上皮細胞で著しく減少していた。以上のことから,子宮特異的LIFR遺伝子欠損マウスは,ERa発現の減少を介した胚着床不全を呈することが明らかとなった。この際,LIFRはエストロジェン応答性を担保することで,Stat3のリン酸化を介した上皮細胞の増殖抑制および間質細胞の増殖(脱落膜化)を制御していることが初めて明らかにされた。

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