日本繁殖生物学会 講演要旨集
第113回日本繁殖生物学会大会
セッションID: P-96
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ポスター発表
Dlk1の両アレル発現が体細胞核移植クローン胎盤に及ぼす影響について
*井上 貴美子廣瀬 美智子長谷川 歩未持田 慶司小倉 淳郎
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抄録

【目的】体細胞核移植クローン(SCNT)の発生過程には多くの異常が観察される。中でも胎盤の形態異常は,多くの動物種に共通して現れることが知られている。マウスクローンで見られる胎盤異常は,胎盤が大きくなる胎盤過形成と胎仔が存在せず胎盤のみが発生する胎仔なし胎盤が観察される。胎仔なし胎盤は,体外受精や顕微授精など他の生殖工学技術ではほとんど観察されない現象であり,SCNTの出生効率を上げるためには,これらの異常を改善する必要がある。胎仔なし胎盤では,父性発現刷り込み遺伝子の一種であるDlk1でIG-DMR領域のインプリント喪失によって過剰発現(両アレル発現)が起きている事が示唆されている(Okae et al., HMG, 2014)。本研究では,Dlk1遺伝子欠損(KO)マウスを用いてDlk1の発現量を調節したSCNT個体を作製し,SCNT胎盤の表現型に影響を与えるかどうかを観察した。【方法】KOマウスラインの作製にはC57BL6/N由来のIVF胚を用いた。Dlk1遺伝子の両端に設計したgRNAとCas9タンパクを共に前核期胚細胞質に導入し,偽妊娠雌への胚移植によってF0産仔を獲得した。KO個体はPCRによって確認した。交雑系雌アレルKOマウスを作製するためにKO雌個体を野生型DBA/2雄マウスと交配させ,F1個体を獲得した。F1個体由来の卵丘細胞を核ドナーとして核移植を行った。【結果】Dlk1 KO群のクローン産仔は188個の移植に対して7匹(3.72%)であり,コントロール群の3.0%(3匹/101個胚移植)と有意差はなかった。胎仔なし胎盤はDlk1 KO群で4個(2.1%)であり,コントロール群と有意差はなかった(4個/101個胚移植,4.0%)。胎盤の形態観察を行ったところ,野生型SCNT胎盤と同様の過形成異常を示しており,改善の様子は見られなかった。したがって,インプリント消失によるDlk1の両アレル発現は,SCNT胎盤の異常とは関連がないと結論づけられる。

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