日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 123
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生殖細胞
ブタ卵母細胞の体外成熟条件が活性化後の発生能力に及ぼす影響
*許 尚丹木村 隼人三宅 正史
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抄録
【目的】生体成分を含まない単純合成化学培地によるブタ成熟培養系の確立を目的として,合成高分子物質の成熟と発生に及ぼす影響,ならびに成熟培地中に存在するアミノ酸の発生に及ぼす影響について検討した。【方法】直径4-6mmの卵胞から採取した卵母細胞!)卵丘細胞!)顆粒膜細胞複合体(OCGCs)と卵胞膜を10% FBS,4.0 mg/ml BSA,または3.0 mg/ml PVAを添加したmSOF,mSOFのみ(無添加区),および10% FBSを添加したmTCM199で42時間成熟培養後,成熟率を調べた。また,卵丘の膨潤化を検討するために,アクチンフィラメントの分布様式,OCGCsにおけるアポトーシスを調べた。また,電気刺激活性化後,サイトカラシンB処理を行って単為発生2倍体を作り,PZM-3を用いて168時間培養した。さらに,PVA添加mSOFに必須アミノ酸および非必須アミノ酸を添加した培地で成熟させた卵母細胞を活性化し,発生率ならびに胚盤胞の細胞数を調べた。成熟および胚培養は,すべて38.5˚C,5%CO2,湿潤条件で行った。【結果】成熟培養後,いずれの実験区でも90%以上の卵子がMIIに達し,有意差は認められなかった。FBS添加区において,卵丘の膨潤化がもっとも充実し,卵子周囲に残存するF-actinの分布がもっとも少なく,アポトーシスを示す卵丘細胞数も少なかった。活性化96時間,および168時間後における桑実胚ならびに胚盤胞の割合は,FBS添加区において有意に高かったが,他の実験区間では有意差が認められなかった。また,FBS添加区の発生率は必須と非必須アミノ酸添加区よりも高かったが,胚盤胞の細胞数には有意差が認められなかった。以上の結果から,血清および高分子物質を含まない単純塩類合成培地で成熟させたブタ卵母細胞は,活性化後,胚盤胞まで発生することが明らかになった。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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