抄録
【目的】脂肪細胞から分泌されるレプチンはLHやGH分泌を刺激することが報告されている。しかし,反芻家畜の場合,血中レプチン濃度の測定が難しいため,その分泌形態はよく分かっていない。そこで本研究は,RIAによる反芻家畜の血中レプチン濃度の測定系を確立し,ウシにおける血中レプチン濃度の日内変動を明らかにしようとした。
【方法】(1)RIAによるレプチンの測定系について:ウサギにヒツジレプチンを免疫して抗血清を作製した。得られた抗血清はアフィニティカラムを用いて精製,濃縮した。ヒツジレプチンのヨード化とRIAのプロトコールは,Blacheらの方法に従った。精製した抗体の希釈倍率,ウシ血清と標準曲線との平行性,血清からのレプチンの回収率を調べた。(2)血中レプチン濃度の日内変動について: 3.5~6ヶ月齢の雄子ウシ計7頭を用いて,12:00から翌日12:00までの24時間,15分間隔で採血を行った。血漿中レプチン濃度は確立したRIA系により測定した。
【結果】(1)精製した抗体は500∼1000倍でRIAに使用できた。段階希釈したウシ血清は標準曲線と平行した。ウシ血清からのレプチンの回収率は平均120%であった。(2)ウシの血中レプチン濃度は不規則なパルス状分泌形態を示した。レプチンの分泌様式は,午後の方が午前より血中レプチン濃度が高いもの(3頭),朝方にレプチン濃度が高まるもの(3頭),一日中ほぼ同じ濃度を維持するもの(1頭)の3形態に区別できた。以上の結果から,本研究で確立したRIAによりウシの血中レプチン濃度は不規則なパルス状分泌を示すことが明らかになった。