日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 148
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着床・妊娠
スンクス(Suncus murinus)におけるプロジェステロン分泌
*杉山 千織井上 直子織田 銑一福田 勝洋
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抄録
【目的】スンクスは周年繁殖の交尾排卵型動物であるが,その生理作用機構や内分泌制御機構において独特な特徴を有している。妊娠中のプロジェステロン分泌に関しても,妊娠初期から中期では低レベルを保つ血中プロジェステロン濃度が後期に急激に上昇すること,少数例ではあるが,妊娠の初期段階に卵巣除去を行っても妊娠維持が可能であることが報告されているなど極めて特異な性質を示す。しかしながらこの特異的な現象のメカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究ではプロジェステロン産生組織と分泌についての検討を行った。【方法】妊娠スンクスの卵巣,胎盤,副腎を妊娠0,5,10,15,20,25,30日で採取し,4%PFAで48時間浸漬固定後,常法に従い5μmのパラフィン切片を作製し,P450scc(cytochrome P450 side chain cleavage),P450arom(aromatase cytochrome P450)の各組織での局在の推移を免疫組織化学的手法を用いて調べた。【結果】P450scc発現は妊娠5日目に初めて認められ,卵巣・胎盤ともに妊娠20,25日で最大となった。卵巣では黄体,胎盤では特定の細胞群においてのみ局在がみられた。P450arom発現も妊娠5日目に初めて認められ,徐々に増加していく傾向にあった。胎盤でのP450sccとP450aromの局在は一致していた。卵巣では胎盤よりも強い陽性反応が認められた。しかしながら妊娠8日目に卵巣除去を施したものでも妊娠が維持された。またどちらの酵素においても,副腎においては妊娠していないものとの優位な差は見られなかった。これらのことよりスンクスでは卵巣だけでなく胎盤にも妊娠時におけるプロジェステロン分泌能が備わっていると考えられる。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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