日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 149
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着床・妊娠
ウシ子宮内膜における 11β–hydroxysteroid dehydrogenases 発現と糖質コルチコイドの作用機序
*李 和容滝上 知里Acosta Tomas手塚 雅文奥田 潔
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抄録
【目的】我々はウシ子宮内膜に機能的な glucocorticoid receptor (GR) α の存在することを見出し,glucocorticoid (G) が子宮内膜間質細胞における prostaglandin (PG) F2α の基礎分泌および腫瘍壊死因子 (TNFα) 刺激下の PGF2α 分泌を抑制することを示した。本研究ではウシ子宮内膜における G の生理的役割の詳細を明らかにする目的で,発情周期を通じた 11β–hydroxysteroid dehydrogenases (11HSDs) mRNA 発現量の変化について検討した。G の作用は 11HSDs により局所的に調節される事が知られている。さらに,G の PGF2α 抑制作用が genomic な作用であるかどうかを明らかにするために G の作用におよぼす RU486 (GR antagonist) の影響を併せて検討した。【方法】1) 発情周期各期の子宮内膜組織における 11HSDs mRNA 発現量を半定量的 RT-PCR により調べた。2) 子宮内膜組織から間質細胞を単離し,コンフルエントに達するまで培養した後,培養液を交換すると同時に RU486 (10 µM),cortisol (Cr; hydrocortisone 100 nM) または TNFα (0.06 nM) を単独または組み合わせて添加した。24 時間後,培養上清中の PGF2α 濃度を EIA により測定するとともに,プレート毎の DNA 量を測定した。【結果】1) 11HSDs mRNA 発現は発情周期を通じて認められ,11HSD1 mRNA 発現量は中期と後期に低く,卵胞期から排卵にかけて高かったが,11HSD2 mRNA については発情周期を通じて発現量に有意な変化は認められなかった。2) RU486 は間質細胞における Cr の PGF2α 分泌抑制作用を阻害し,また,TNFα の PGF2α 合成刺激作用を抑制する Cr の作用を阻害する傾向が示された。以上より,ウシ子宮内膜において,排卵時 および退行期に高い 11HSD1 mRNA 発現が不活性型 G を活性型 G に転換することにより,排卵時および黄体退行時の PG 分泌を抑制する可能性が考えられる。また,G の PG 抑制作用は genomic な作用である可能性が示された。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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