日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 65
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卵胞
茶カテキンによる卵巣顆粒膜細胞の保護作用
*西田 綾子島田 剛志間世田 英明後藤 慶一原 征彦宮崎 均
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抄録
[目的]卵胞の発育か閉鎖かの運命決定では,顆粒膜細胞の生存とアポトーシスが鍵を握る。我々は,酸化ストレスが卵巣顆粒膜細胞のアポトーシスを誘導することを報告しており,この細胞応答を制御することは畜産や医療分野に応用できるものと考えている。本研究では,抗酸化作用を含む種々の作用が知られる茶カテキン種に着目し,それらのブタ卵巣顆粒膜細胞に対する影響及びその作用機序を解析することを目的とした。
[方法]ブタ顆粒膜細胞は,と畜場より得た健常卵胞から調製10%血清入り培地で培養した。各種キナーゼ活性は,活性化型認識抗体を用いたウェスタンブロット法で,細胞内過酸化水素量は,蛍光色素DCFを用い共焦点レーザー顕微鏡にて測定した。
[結果]50µM 過酸化水素添加により,顆粒膜細胞の生存率は16時間後に10%に低下したのに対し,50µM エピカテキン-3-ガレート(ECG)及びエピガロカテキン-3-ガレート(EGCG)の30分間前処理群では,70%の細胞が生存していた。一方,カテキン,エピカテキン(EC),エピガロカテキン(EGC)は細胞死抑制の傾向は示したが,その効果はECGやEGCGに比べ弱いものであった。EGCGは培地に添加され細胞内に入った過酸化水素量を,抗酸化物質であるN-アセチルシステインと同様に顕著に減少させた。また,顆粒膜細胞のアポトーシスを仲介するp38の過酸化水素による活性化は, EGCGにより抑制された。従って,酸化ストレス依存的な顆粒膜細胞死のEGCGによる抑制は,少なくとも一部は活性酸素種の消去によると考えられる。さらに,EGCGは細胞の生存に重要なキナーゼAktを,添加30分後から持続的に活性化した。この作用は PI3キナーゼ阻害剤の添加で消失したことから,EGCGの作用点はPI3キナーゼより上流にあることが示された。以上の結果は,酸化ストレスによる顆粒膜細胞死で誘導される卵胞閉鎖の抑制に,カテキン種の一つEGCGが有効であることを示唆するものである。
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© 2005 日本繁殖生物学会
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