日本繁殖生物学会 講演要旨集
第98回日本繁殖生物学会大会
セッションID: 66
会議情報
精子形成
精巣形成不全症ラットに見出された紡錘体微小管結合蛋白における挿入変異
*鈴木 浩悦八木 美央斉藤 賢一鈴木 勝士
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】精巣形成不全症ラットは、第10染色体上の単一劣性遺伝子(hgn)により、精巣形成不全による雄性不妊、卵巣低形成による早期不妊症、腎低形成による進行性腎不全を呈する。これまでの病態解析は、hgnが体成長と腎臓および生殖腺の発達に関与し、特に精巣のセルトリ細胞の増殖分化に必須であることを示してきた(BOR 2004;71:104-116)。今回、hgnの有力な候補を見出し、遺伝的変異を同定したので報告する。【方法と結果】565匹の戻交配仔を用いた連鎖解析によりhgn周辺のファインマップを作製し、hgn存在領域を約320kbの範囲に特定した。この領域には機能的遺伝子が7個存在し、5個の遺伝子が胎生期および生後初期の正常な精巣と腎臓で発現していた。そこで、hgn/hgnの精巣からRNAを抽出し、cDNAを合成し、候補遺伝子の発現レベルを調査したところ、紡錘糸微小管結合蛋白であるSpag5(Deepest/astrin)において、hgn/hgnで発現レベルの低下と高分子側へのシフトが見られた。cDNAとゲノムの配列を決定したところ、hgn/hgnで25塩基が重複して挿入されていることが判明した。【考察】Spag5のノックアウトマウスでは表現型が正常であることが報告されているが、HeLa細胞でのRNAiによるSpag5の発現抑制では、M期における正常な紡錘糸形成の失敗により、アポトーシスを呈することが報告されている。この異常所見はhgn/hgnの生後初期精巣で認められるセルトリ細胞の分裂異常(染色体がバラバラになった異常分裂中期像とアポトーシス)と類似している。また、胎生後期から生後初期のhgn/hgnのセルトリ細胞でBrdUの取り込みが減少する一方で、分裂像が多く認められることから、Spag5の異常によりM期が延長している可能性がある。ノックアウトマウスでの正常な表現型に関しては、バリアントの存在によるのか、ラットとマウスの動物種差によるのかさらなる調査を要する。また、Spag5は微小管結合蛋白であり、セルトリ細胞の分裂だけでなく、その分化(極性や形態形成)に関与している可能性がある。
著者関連情報
© 2005 日本繁殖生物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top