地域漁業研究
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論文
中国におけるウナギ養殖産業の展開とその条件
白 銀平佐野 雅昭
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ジャーナル オープンアクセス

2006 年 46 巻 2 号 p. 1-21

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抄録

中国において急速に発展を遂げているウナギ養殖産業について,その競争力を多様な角度からから,特に賃金条件ではなく産業組織と政策に着目して分析し,その将来展望にも言及した。

中国は豊富なシラスウナギ資源,温暖な気候,潤沢な水と用地など恵まれた自然条件を有し,ウナギ養殖業において大きな潜在的可能性を持っていた。そこに華僑資本及び台湾と日本の先進技術が導入され,巨大な日本市場を対象として急速な展開を遂げたのである。また活鰻市場における台湾との競合を避けるため,安価な労働賃金を利用しつつ加工鰻として輸出する方向に産業展開を遂げてきた。そして鰻加工を輸出産業として成立させるために,国際水準の加工工場建設が進められ,同時に輸出補助金政策なども行われてきたのである。そこでは加工業を中核とする垂直統合化が進められ,力強い寡占化が進んでいる。こうした統合化は鰻養殖・加工産業に経営合理性を持ち込み,競争力を高めると同時に近代化を推し進める重要な契機となった。

またこうした急激な発展と統合化の進展の背景として,政府の強力な支援策があったことも指摘したい。中国は国家的政策として一次産業におけるアグリビジネス化を図ってきているが,鰻養殖産業においてもこのことが貫徹されているのである。ただし野菜等の農産品と異なり鰻養殖業は水産養殖業固有の限界性を有している。今後も統合化・寡占化が進むことが考えられるが,それが野菜等と同様の展開を辿ることは考えにくいであろう。

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© 2006 地域漁業学会
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