地域漁業研究
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第50回ミニシンポジウム
地域資源を活かした水産業の振興のあり方
萩市らしく,そして萩ならではの
三輪 千年三木 奈都子
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2009 年 50 巻 1 号 p. 67-80

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抄録

本論は,2008年度学会ミニ・シンポ「山口県萩市における地域資源の有効利用と道の駅萩しーまーと -地域振興と水産業-」の狙いを地域経済視点から提起したものである。

山口県萩市は,水産業の振興策を立案するに当たって,地域の資源(地域が有する生産対象資源,金融資源,技術・人材資源等の経済・経営資源の他に,地域の景観や風景などの自然環境資源,歴史や伝統,更には地域の人々が共有する信頼や人情などの人的ネットワークといった利用可能なあらゆる資源)を有効に活かした振興計画(町づくりの一環とする地域興し)を策定した。中でも,2001年8月に萩地方水産物卸売市場に隣接して設けられた道の駅「萩しーまーと」を,単なるイベント広場や観光施設としてではなく,萩市民にとっての農・水産物の「地産地消」の場として水産業振興計画に組み込み,「市民の中に浸透させた振興計画」として実践している。

また,全国の沿海部に位置する地方自治体(人口規模5~10万人程度の地方都市・市町村)が水産業振興計画を策定するに当たって留意すべき事柄や課題についても提示している。とは言え,これらの留意点や課題を抽象的に論じても,市町村の中での水産業の位置づけや,背景とする市町村の経済的・社会的構造などの違いによって,採るべき振興計画や行政施策は違うのは言うまでもない。そこで,水産業の振興計画を立案するに当たって,水産業及び流通・加工業者などの水産関係者(生産・供給サイド)に限定せずに,幅広く市民各層(消費者サイド)の視点も取り入れた,独自の水産業振興計画を策定した山口県萩市の事例を紹介することで,地方自治体(市町村)が水産業振興計画を策定するに当たって留意すべき点や問題を整理した。

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© 2009 地域漁業学会
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